『 週刊 Hanko 』

   325号



 だんだん日がのびてきて,日差しがやわらかくなってきましたね。さすが立春。少し暖かくなりましたが,風が強めでお散歩には出掛けられず,部屋の中がオモチャでごった返し状態がまだ続いています。
 家の中に置いてある二人乗りのブランコに,最近やっと二人で乗れるようになって,夏希も嬉しそう。今までは向かいの席にお人形を乗せていたのです。春歌を乗せたら「春ちゃん,ちゃんとここ持って。あんよ伸ばして」と,お姉さんぶりを発揮してました。台所にも子供椅子が二つ。二人で並んで食べています。お互いにじゃれ合いつつ,前より食が進むみたいで何より。(^_^)

◆春歌・10カ月◆
 標準の一番下のラインを辛うじてキープしている小柄な春歌,体重が軽すぎるせいか,なかなか力がつかず,成長も遅めで少し心配でしたが,このところグンと芸達者になり,腹這いもハイハイに進化し,ほっとしています…と思う間もなく,本格的な活動開始!手当たり次第に紙を食べ歩く(ティッシュからダンボールまで),たたんだ洗濯物をばらまく,食卓のお皿をひっくり返す…こーゆーのを「ありがためーわく」と言うんでしょうか?それでも,名前を呼ぶと思いっきり手を高く上げるのがかわいくて「春歌ちゃぁん!」と呼びまくってしまう,親馬鹿者でありました。^_^;

◆「月に歌うクジラ」◆
 突然ですが,1977年に打ち上げられた宇宙船ボイジャーが,太陽系を出てほかの星に旅立つ時,人間62種の言語の他にクジラの歌が積み込まれていたのを御存知でしたか?イルカを含むクジラの仲間は,人間と同じくらいかそれ以上複雑な脳を持っていて,彼らの魅力的な歌は,とても興味深い研究の一つとなっているようです。それを紹介しているのがこの本。
 ある講演会で,チェリストでもあるクジラの研究者が,クジラの歌とチェロの二重奏を披露したところ,「轟きわたるインド風の旋律,椅子をゆるがすようなバスで奏でられる,きしるような悲しげな歌」の美と神秘が聴衆をとりこにし,泣き出す人もいたとか。まだまだ謎の部分が多いのですが,ちゃんとフレーズもあり,同じ歌を何度も繰り返し歌うそうです。どうやら雄が歌っているらしく,それは雄同士の喧嘩の代わりであるとか,クジャクの羽のように雌を誘うためであるとか,色々な学説があるようです。

 でもこの本では,歌についてはもちろん,クジラの生態が事細かく魅力的に記されていて,とてもおもしろい!例えば,
◎クジラは体温を低く保つのが難しく,猛スピードで泳ぐと熱がこもって破裂しそうになる。死んでからも骨が焼けこげるほどの熱を生み出している。
◎地球上で最大の生き物「シロナガスクジラ」(体長30m)の睾丸は70kg。ところが,それよりずっと小さいセミクジラは,なんと1トンの睾丸(世界最大)を持っている。これは,その種の配偶システム(交尾の習性)に由来する。
◎セミクジラは昼寝する時,背中を海上に出しているため,日焼けをする。人間同様,日焼けした部分の皮がむけ,その巨大な皮は海中に漂い鳥のエサになる。ところがある種のカモメが,まだはがれない背中の皮をむしりとって食べるようになったため(時には穴をあける!),カモメが背中に降り立つとクジラがパニックを起こしたりする。
◎セミクジラ・ホッキョククジラなどをまとめて「ライト・ホエール」と言うが,これは"Right Whale to Kill"(殺していいクジラ)という,実はとてもおそろしい名前である。
◎『クジラを救え』キャンペーンで,捕鯨の大部分が禁止になったが,現在,流し網・有毒物質で(自由に捕鯨していた頃よりも)大量のクジラが死んでいる。
 その他,育児の様子や,レイプの方法!?などなど,盛り沢山!!

 著者のダイアン・アッカーマンは,これぞと思った生き物を調べるためには,たとえ火の中水の中!?北極だろうがアマゾンだろうが,どこにでも行って,触れるほどすぐそばで観察してレポートしてしまう,ネイチャーライターとして評価の高い,女性です(日本にもアホウドリの調査で伊豆諸島を訪れているとか)。この本の中では,クジラの他に,コウモリ・ワニ・ペンギンについても旺盛な好奇心でレポートしています。どれも縁の薄い動物なのに,なぜかとても身近に感じてしまう,不思議な本。良かったら,読んでみて下さい。
  「月に歌うクジラ」
  ダイアン・アッカーマン著 葉月陽子訳 筑摩書房 定価2500円

1998.2.4 斎藤 範子(Hanko)



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