ラグラン袖の
グレーデイング(7)

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ラグラン袖のグレーデイングは今迄の諸例よりもやや複雑です。それはバストの変化がバストダーツの増加・減少によらず 前後のラグラン線に配分される事が多いからと思われます。

前後のラグラン線の変化は袖と同一でなければなりませんし、また前後の袖は中央線で合致しなければなりません。 この分量の変化は只、長さが合うという事だけでなく、肩巾、肩丈の変化量も含むので条件を一つ一つ合わせると云う順序が取り難いからです。

ラグラン袖のGDの考え方

考え方としては予め、ラグランの舌部分に 肩点を想定し、身頃ラグラン線の aE 点とを結んで袖下部分から切り離し、後身頃と袖の肩部分を合せ閉じた『部分パタン』 を作り、後身頃のバスト線から上の部分の拡大を行います。

前身頃の拡大では同様に前身頃と袖の肩部分を合せ閉じた『部分パタン』を作り、拡大された後ろの舌部分の寸法を使って前身頃のラグラン舌部分の 袖を拡大すると云う方法を取ります

とくに前身ではラグラン線の途中からB/Pへダーツが入っている事が多く、その場合は 一旦ダーツを閉じた状態で袖の肩部分 を補助パタンとして付けて拡大を行い、後にダーツを開いて身頃側のラグラン線を記入する,と云う二度手間をかけますので 多少複雑な操作になります。

最後に拡大された前後のラグラン袖の舌部分を元パタンに合わせ、身頃の肩線で拡大された肩丈を袖の中央線で袖巾の拡大に付け加え、前後身頃の カマ巾の増加分はラグラン袖の袖下の袖巾拡大として身頃と袖のラグラン線を合わせます。

(1)後身頃の拡大操作


   本来の見頃のN/Pが後身頃、前身頃の全体的な関連で識別できるように、後身頃に袖パタンを合わせ、欠如しているN/P〜衿ぐり〜肩点〜後袖の C点まで、身頃と袖の肩部分を合わせて写し取ります。この時 1ーC の間に小さな隙間が生じますが気にせずにその儘、記入します。(1-A図)

<1> 此のラグラン・パタンでは肩のダーツが後中心線に移されていて背中心線が外側に傾斜させてあります。その場合は傾斜の線に直角に補助線 a - b を引き、a - b に直角にNpのh 点、肩点の Ab を通って上方向に拡大を行なうようにします。

<2> @→A、B→C、とカマ丈を拡大し、A→D、は後巾の拡大、
C→Eは後首巾の拡大(後巾-後首巾の移動)は原型の拡大方式に準じます。

<3> 元パタンの@をAの点にあわせ、後中心線を平行に置いてB-@の衿ぐり線を延長しDとEの点を決めます。

<4> 元パタンのBをEの点にあわせ、元パタンの肩線に平行に拡大された肩線をE→Fと引き、肩先でF→Gと小肩巾を拡大します。

<5> A→Dは裾でも後巾を開いて後中心線の拡大を行います。

<6> J→Kは後丈、L→Mはコート丈の拡大を行います。

<7> O→Oはカマ巾の拡大を行います。

<8> ラグランの衿ぐり部分は元パタンのB→B’をE→Hの合わせてマークして決めます。

<9> H〜hAe のラグラン線はB’をHにあわせ、元パタンのB〜Iの湾曲線を写して決めます。

(2)前身頃の部分パタンの作成


ラグラン線のバストダーツを前中心線に逃してダーツを閉じます。
この際回転の中心点はダーツの頂点Dではなく、BPのAを中心に回転させます。

するとD→CとA→Cの長さが違いますのでCの頂点が上下にずれますがその儘にします。
袖パタンを合わせてB→Cを接合しますとCより下の部分で 身頃と袖が重なりますがその儘にして写し取ります。(2-A-b図)

Bpを中心にダーツを閉じると開き口が食い違ってきますがその儘にしますのは、拡大が終了した時点で元の状態に戻す為です。

D→vAe(袖の)を結び、3 - 4 cm の点を a とします。肩点 Ab は後身頃の小肩巾の長さを合わせて位置を決め、直角に線を出して内側 3 - 4 cm の点 を b とし、a - b を結びます。

結果B→vAe→a→b→Abのラグラン袖の肩部分のパーツが出来ました。

(3)前身の拡大、Bp の移動


  • 前丈(カマ丈)の拡大
  • ・・・ 前丈の拡大、はトルソー原型の拡大と同じです。
  • 前巾・前首巾の拡大
  • ・・・ 前巾の拡大、前首巾の拡大、はトルソー原型の拡大と同じです。
  • Bp の移動・ダーツ頂点の移動
  • ・・・Bp、及びダーツの頂点はは前巾ー乳間の長さを左に移動します。

    衿ぐりの拡大は元の湾曲線を変更せずにその儘の湾曲を使うようにします。その為に成るべく補助パタンを作成し、前首巾・前首丈の増加分量のマーク を付けて使うようにします。


(4)ラグラン袖、肩部分の拡大


  • 肩丈の拡大、小肩巾の拡大と中央線の記入・・・Abの肩点では肩線への直角線に添って肩丈を移動し、(25)→(26)  後の小肩巾の拡大とどう分量を上(26)→(27)にずらします。(25)→(26)→(27)
  • ラグラン線衿部分の確定とラグラン線(袖の)記入・・・Bp→(21)をコンパスにとり、Bp を中心に肩サイドに円弧を振ります。
    その円弧にラグランの衿ぐり線の接点Bを合わせ、(28)とします。
  • 身頃のラグラン線は袖の肩部分が競り上がってきた為に(f)点、vAe 点は上方向にずれていますのでその位置で(29),f'点を
  • マークし、  身頃と袖のラグラン線を元パタンのそれに繋ぎます。



(5)前身頃とラグラン袖の結合


  • 移動したダーツの頂点 (24) - (29) をコンパスにとり、(24)を中心に(24)-f点をコンパスに取り、中心側へ円弧を振ります。
  • 拡大されたラグランの(28) - f を身頃側の(21)より(24)-f点の円弧上に振り、(31)点を決め、(21)-(31)を元パタンの円弧を移して記入します。

此の部分が一番ややこしいヶ所です。

  • ラグラン袖の肩部分の巾(肩丈)を拡げ、肩巾を後袖のデータを使って拡大します。(25)→(26)→(27)
  • 此の時衿ぐりの接点を決めるのに拡大したBp - (21)の円弧上に接して決める点がポイントです。
    この時点で袖と身頃のラグラン線が上にずれて   f 点- vAe の位置が決まるので元パタンの其れと結んで拡大されたラグラン線が決める事が出来ます。

  • 次に拡大移動したバストダーツの頂点(24)を中心に拡大されたダーツの開口点 f'を結んでコンパスに取り、前側に向けて   円弧を振り、拡大された(28)-f'の長さを(21)から円弧上に取ってダーツの開き分量を決めます。

  •   つまり前巾の拡大と肩巾の拡大のバランスの差をバスとダーツに吸収してダーツ量を決めるのが原則的な方法ですがラグランの場合は前身と肩線は   直接接合せず、ラグラン線を媒介に接合するので拡大した肩線=ラグラン線と前巾のバランスの差からバストダーツ量が決められるのです。

    (6)ラグラン袖の拡大
















    元パタンを図の様に写し、それに部分パタンを分離した線を記入します。
    更にこの上に拡大されたラグラン袖の肩部分を切り離してAe-a-c,c'-B-Ab の部分を合わせるとラグランの舌の部分が描かれます。


  • 袖丈の拡大ー袖丈のPtは身長のPtの1/3 ですが肩線で既に肩巾として拡大されていますのでその分量を差し引き、@→Aと拡大します。ラグラン袖 は袖が長くなり易いので素材の性質を見て加減します。

  • D→E 袖巾の拡大、変更量はカマ巾の変更量×1/2を前後の下袖の縫い線で水平に拡大します。 

  • F→G 袖口巾の変更量はカマ巾の変更量とおなじですがそれを前後4ヶ所に分散し、1/4づつ拡大します。

  • C,Ab で既に肩丈の拡大でラグラン袖の肩部分は拡大されています。肩点より下の上袖線は』元パタンの縫い線に沿って略平衡に引きます。それより 上の部分はC,Ab の肩丈拡大分に合わせて元パタンの曲線を用い、滑らかな曲線で繋ぎ、上袖線を完成させます。

    C,Abの肩丈の拡大は後よりも前の方の分量が多くなり易いです。前が多いとラグランの上袖線が後方向へズレ易くシルエット上は 好ましくありません。その場合は設定に際して加減するようにします。


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