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  苦沙弥先生 (2002.4/2)


 近頃めっきり胃が弱くなった。
気晴らしに、と、ついつい暴飲暴食に走る時
など、
以前ならお腹を下すだけで済んだのだが、
今では何日間にも渡って胃が
痛むようになってしまった。
忍耐を強いられる種の仕事をしている時など、
よくパーっとお酒を飲んで騒いで気分転換をしたものだが、
最近は胃がキリキリと痛んで憂さ晴らしもままならない。
 胃弱といえば真っ先に思い浮かぶのが『我が輩は猫である』の
苦沙弥(くしゃみ)先生である。
主人公「我が輩」の飼い主で、
うだつの上がらない英語教師として登場するが、
この人はとにかく胃弱で、
様々な民間療法を試してはすぐやめたりするところが何度か出てくる。
澱粉質がいいと言ってその種の投薬を始めて続かず、
晩酌がいいと聞いて二日くらい続けてはまたやめる、
固形物を食べるのをやめると言って牛乳だけで過ごし一日でそれをやめ....
と様々なエピソードが続くのだ。
こんなことをするから胃が悪くなるのかもしれないし、

こんなこと自体が既に胃弱体質特有の性格を表しているのかもしれない。
卵が先か鶏が先か?どのみち胃弱は胃弱なのだ。
胃弱を美化するなんて無駄なこと。
神経が繊細だなんて自慢にも何もならない。
皆がビールでパーっと乾杯する時に、
一人だけ燗酒とか焼酎お湯割りなんか頼むものだから、
飲み物がなかなか来ないので、いつも乾杯を待たせる。
居酒屋でワインを常温で注文しようとすると、
たいてい冷えているのしかないし、
なんだか気取った客みたいになってしまう。
レストランなどで、食後に、
「女性だけにサービスです!アイスクリームをどうぞ。」
なんてにっこり笑って差し出されると、心の中で、
『食べるかどうか聞いてからにしてくれればいいのに。』
と恨みながらも黙って食べることになる。
ドロドロに溶けて残してあるアイスクリームというものは
見た目に悪意を感じさせるものだからである。
そんなこんなで、胃弱は人の邪魔をし、人の親切を無にする運命にある。
最初に『我が輩は猫である』を読んでから既に20年以上経つが、
ますます苦沙弥先生が好きになった。

 

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