今年も連休が来た。連休といっても、広い意味で娯楽を提供する職種の人
にとって、世間の休む時こそ稼ぎ時である。音楽家もその部類だ。
今の職についてから何年になるだろう?「食える、食えない」の基準は人
によって違うのでどこからを「プロ」と言うのかは難しいが、とりあえず
レストラン等で働くのをやめた時から、とすると約10年である。そしてこ
の10年のうち失った娯楽は『音楽』である。
私の物心ついてからの最大の娯楽は常にレコード鑑賞だった。
私の家庭は両親が留守がちで、弟が小さい頃はよく近所のお宅に預けられて
いたので、一人でレコードに没頭する時間が山程あった。父の仕事が軌道に
乗りアパート住まいでなくなってからは、オーディオ機器も相当なものが揃
ったおかげで、高音質で70年代ロックを聴きまくったものだ。
大音量で聴きたいので、夏でも窓をしめきり、当時のエアコンが結構うるさ
い音を出したせいで使わず、汗びっしょりだった記憶がある。レコードに浸
りたい時に弟が家にいると何かと邪魔なので、小銭をあげて追い出したこと
もよくあった。
今ではあれほどの強い娯楽が私にはない。子供の小遣いで買うレコードなど
枚数も限られていた頃に較べて、CD1枚の有り難みがなくなってしまったこ
ともあるし、多感な時期に貪欲に吸収し、反応した感受性自体が変わったの
かもしれない。10代に泣いた曲で20代には泣けなくなった。最近は20代で
泣いた曲で泣けなくなった。新譜で、何かをしながらでなく、CDを聴くとい
うためだけに20分でも我慢できる作品を私は知らない。今だ昔のレコードで
はそれが可能だが、客観的に言ってその作品が優れているからではなく、思
い出がセットになってるから熱中できるだけかもしれないので、
「80年代以降の音楽はダメ」
と否定する気もない。とにかく音楽鑑賞自体を楽しめなくなったのだ。
また、仕事柄、CMの音が気になってくつろげない為、テレビもあまり好きで
ない。テレビの前でウトウトと気持よく眠ってる時に、CMで流れてきた自分
の歌声で飛び起きたことがある。人間の睡眠の構造などについて考えさせら
れる出来事だったが、こういったことからもテレビは既に娯楽ではない。
私の娯楽は何だろう?飲食?映画鑑賞?それとも、読書だろうか?
あと何年生きるかわからないけれど、これから先、音楽ほど熱中できる娯楽
をどうやって見つけたらいいのか?
それとも、またいつか音楽が最大の娯楽となる日が戻ってくるのだろうか?
いずれにせよ娯楽など躍起になって探すべきものではないので、しばらくは
このまま生きていこうと思う。