この夏はヨーロッパ人のヴァカンス並みに休んだので、今が夏休み明けと
いうところだ。怠け癖がついたのか、さっきから全然仕事が進まない。
だいたい、私は集中力が持続しない人間である。小学生の頃は、通信簿にい
つも『落ち着きがない』と書かれていたし、高校時代はデッサンなんかする
と、20分くらいしか座っていられなかった。絵を描かない人に説明しておく
と、石膏像などを木炭や鉛筆で細かくデッサンするには少なくとも一枚につ
き7〜8時間は要するもので、学生が美大受験の為に予備校に通うと、2〜3日
間みっちり座って一枚のデッサンを仕上げるということになる。
私の両親は『どんな理由があろうと大学浪人を絶対に許さない』と表明して
いたので、私だって必死だったはずだが、どうしたって20分くらいがデッサ
ンの為に椅子に座っていられる限度であった。実技以外に受験に必要な学科
の勉強も、家で机に向かうとやはり20分しかもたないので、高校の先生には
申し訳ないが、授業中に『内職』するという手段で何とか切り抜けた。内職
のほうが微妙に時間が分断されよく集中できるのだ。
ところが、人が心配するほど長時間何かに没頭している時が私にはある。
これについては非常に簡単だ。アイデアを絞り出す集中力は20分しか持たな
くても、アイデアが出たあとの作業は、何時間でも続けられるからだ。
なので、何時間も椅子にへばりついている私を見た人は、
「どうせ別のことを考えているに違いない。」
と思ってくれて正解である。
リハーサルなんかで、自分の曲じゃない時など、長時間真剣な顔をしている
ように見えても、九分九厘よそごとを熟考中である。それも20分毎に内容が
変わっていっているはずだ。
私は普段主張の方法が静かなせいか、協調性のある人間だと思われているか
もしれない。ただし、協力的なのは最初の20分間だけである。
世間で穏やかだと言われている人も案外こんなものであろう。
あ、それと、デッサンって深いものだったのね。上の文章から総合するとそ
ういうことになります。