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偶然道で会う (2002.9/28)


 私は家にいることが多いので、道で人に偶然会うということが殆どない。
だからこそ、そういった出会いはとても貴重だ。
一番思い出深いのは、ローマでのこと、トレビの泉近くの広場で一人、塔を
ボーっと眺めていると、3人連れの日本人の中高年女性が話しかけてきた。
「あなたはよく○○の道で見かける人よ。偶然だわぁ!」
とひどく喜んでいる。○○は私の実家のある私鉄沿線の町で、急行が止まる
とはいえ、基本的には住宅街である。私は町の名物のような目立つ人間では
なく、むしろ人のいない路地を選んでコソコソと歩いているほうである。
こちらは一人旅だったが、彼女達は団体旅行の集合時間があるらしく、
「それじゃあ、またどこかで御会いしましょう。」
と言ってすぐに別れた。その後、○○で彼女達には遭遇していない。
次は大阪だ。やはり○○の、かつて同じレストランでバイトをしていた友人
に、心斎橋でバッタリ会った。私は楽器を担いで大勢で移動中で、彼女は彼
と旅行に来ているところだった。お互い連れがあったので、2〜3言かわして
すぐ別れたが、気の合ったバイト仲間だったし、歩いて20分程度のところに
住んでいたにも関わらず、その後は一度も会っていない。
 今度は、家の近くの道路でのこと。私が歩いていると、目の前の畑の道具
置き場から、縞模様の猫が飛び出してきて道路を横断した。猫は全力で走る
時、しっぽが真直ぐ立つ。わりと車の往来のある道なので心配しながら見守
った。そして翌日、何の用事だったか、またそこを歩いていたら、同じ猫の
まったく同じ光景に出っくわした。その道はごくたまにしか歩かないので余
計に興奮したおぼえがある。
ところが、『会いたい』と切望している時、人はなかなか偶然には会えない
ものだ。恋愛中、相手にバッタリ道で会わないか、などと念じながら歩いた
経験がないだろうか?
そんな時、映画やドラマのように物事は動いてはくれない。現実は、
『誰かに偶然会わないかなぁ、一緒に御飯食べてから帰りたいなぁ。』
と思いながらも、誰に電話するでもなく家に着いてしまって、一人で映画見
ながらパスタでも食べ始めて、やっとあきらめるものである。

 

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