よその家の弁当には何か自分の家のと違う匂いがある。
はっきり言って『くさい』と言っても過言でない場合がある。もう古い話に
なるので、誰も傷つかないことを信じて書かせていただくことにする。
あの匂いはよそのうちの台所のにおいだ。細かく言うと、まな板や布巾に発
生した雑菌のにおいだ。
小学生の頃は給食だったのでよかったのだが、中高生の頃は、よく弁当を持
っていくのを忘れた。弁当のない生徒は、2〜3時間目の休みまでに、出入り
のパン屋に注文を書いた紙を出しておくと、昼休みにパンが買えるのだ。
しかし、弁当を忘れたこと自体気付いてなかったなら注文もできない。
それとも、自転車通学だったため余分なお金を持っていなくて、素直に、
「弁当忘れたからお金貸して」
と人にも言えず、ジュースだけ買ってムッツリ座っていたことだろう。
「今日はお腹の調子が悪いから食べないのだ」
なんて嘘をついたに違いない。
そんな時、親切な友達が、タッパーにカチカチに詰まったおにぎりをムンズ
とつかみ出して、断る間もなく私の口の中に放りこんでくれたものだった。
あのおにぎりやウィンナーはどうしてあんなに臭かったのだろう?
御飯は水分でピチョピチョだった記憶があるので、弁当の中味がまだ熱いう
ちにタッパーで密閉した結果、水蒸気と余熱から余計雑菌が育ちやすくなっ
たのだと今では推測することができる。しかし、どんな理由があろうと臭い
ものは臭い。吐きそうになりながら、半ば涙目になっておにぎりを飲み込ん
だことが今となっては懐かしい。
ただし、こんなところで弁当のにおいの話を書くと、私に手作りの食べ物を
くれる人がいなくなってしまうので、少し補足をしておきたい。
大人になってから気付いたが、たまにあの匂いが自分の家の台所から匂う時
があるのだ。原因をたどってみると、タマネギや長ネギを切ったまな板を洗
剤で丁寧に洗わない時、特に匂うことがわかった。それでそのまま放ってお
くと台所中が全部あのにおいになってしまうのだ。その結果、そこのうちの
弁当にはあのにおいが染み付くことになる。
最近は当時より衛生観念が発達し、道具も抗菌技術なんかが進んで、あのに
おいにはあまり出会わなくなった。
なので、少なくともここ10年、あのにおいに当たったことはありません。
私に食べ物をくれた心当たりのある人は、全く気にしないで下さい。
誓ってあなたの手料理のことではありませんから。
また恩知らずなことを書いてしまったかもしれない。