dot.gif (45bytes)
r_top.gif (317bytes)
r_rtop.gif (315bytes)

c_tex.gif (738bytes)

 

暴君 (2003.11/22)


私はかつて暴君だったことがある。弟が生まれる前の話だ。
弟とは5才離れているので5年間だけのことで、当時暴君だという自覚がはっ
きりあったとはあまり思えないが、クーデターの記憶は鮮烈だ。

クーデターとはまた大げさな言葉だが、どうにもぴったりの表現が浮かばな
いので、そう書かせていただく。当事者達に遺恨は全くないので、幼少から
私を知っているかたも安心して御一読願う次第だ。
 暴君の没落は、実は、ジワジワとやってくる。
暴君が何らかの理由で精神的に弱くなり、それが一日や二日で回復しなかっ
たら、そこからが始まりだ。
いつもは強引な暴君がやけに大人しいことに周囲は気付く。
しかし、巻き返した時が恐ろしいので、しばらく傍観することになる。
時間が経過し、暴君が弱ったままなことを確信すると、手下の反乱が一気に
起こり、青天の辟易だった暴君はたった一回の攻撃で失脚する。
 子供同士の社会というものは大人よりむき出しなものである。
狼の群れのように順位がはっきりしていて、一位はたいてい暴君だ。
人生経験も浅いので耐え抜いた人格者が上位に上がる余地はない。
暴君は自分の好きな遊びだけを強制し、一番いい役を有無を言わさず取る。
そんな時の手下の不満げな表情を私はよく覚えているので、決して自分が好
かれた結果一番でいるのでないことを承知のうえだ。
 弟が生まれる時、私は祖母の家に長く預けられた。
本当は短かったかもしれないが、長く感じたのでそう書いておく。
両親の愛情を一身に集め、近所の遊び仲間内でも上位にいた私がいきなり遠
いところで足場を失って不安に過ごすこととなる。
自分の家族という狭い社会で専制君主だった私が、遠く名古屋の地に、新た
な政権を築くほどの力を持たず失脚し、帰京後も立ち直ることなく、暴君で
ない「ただの人」となったのである。
年の近い姉妹兄弟がいると、こういう鮮烈な記憶もなく社会性を身につけら
れるのだが、5才にもなると記憶が残るというだけの話だ。
さて、話しは戻るが、専制君主と言っても団体の大きさは各々だ。
私の場合は内弁慶系の暴君で、大勢引き連れているのでなく忠実な手下が一
人二人いる程度である。また手下がいるからこそ暴君と呼べるのだ。
手下は君主の権力がなくなると、即座に他の君主につくこともあれば、
突如として暴君に成り変わるものもある。

そんなこんなで、私は二度と暴君に戻ることなく、また、手下になる人生も
歩まないことに決めているのである。
意識下であろうとそういう関係性を求めてくる人も敬遠する。
暴君か手下のカードしか持っていない人は、
いつかは中立カードを手に入れるかもしれないし、
手に入れる機会がないかもしれない。
私は既に3枚持っていると言っておこう。


PREVIOUS | INDEX | NEXT

 

 

r_bot.gif (261bytes)
r_rbot.gif (308bytes)