私の寝ている真横を小さい蟻が行列するのは前にも書いたことがある。
2年ほど前、タイで買って来た昆虫の標本が私の部屋に飾ってあった。
思い起こせば、蟻の大行列はそこから始まったように思える。
おみやげ用のガラスケースがあまりにお粗末だった為、密閉度が低く、
臭いが気になるので、昆虫用品店でガラスケースを購入し、収納し直した。
蟻がその匂いにつられて我が家に侵入してくると考えたことも一因だった。
さて、立派なケースにおさまった標本は無臭状態となり、
蟻の行列も一瞬おさまったので、一件落着かと思った。
しかし、人間にはわからないほどの微かな死骸の臭いがするのか、
しばらくすると行列が帰ってきた。
殺虫剤という手段にどうしても踏み切れず、標本を処理することにした。
以降、蟻の侵入はなくなり、蟻問題を忘れていたのだが、
ここ2週間ほど、再び行列が始まったのだ。
朝方、むず痒くて目がさめるとたいてい蟻が私の腕などを闊歩している。
布団のわきには大行列だ。
ベランダ越しの東西の移動では足りなくなった蟻達が、
我が家を突っ切って南北に移動したくなったということだろうか?
ここまで来ると、さすがに大量殺戮という手段をとらざるおえない。
蟻用のコンバットをベランダ4ケ所に置き、翌日、蟻は全くいなくなった。
そして翌々日の今日、我が家の植木鉢から蟻の死骸を続々運び出す蟻がいる。
多分よそのベランダの蟻が我が家の蟻の屍臭をかぎつけたのだと思う。
ということは毒餌を食べた蟻が死に、その死骸を食べた蟻がまた死ぬ
、という上手くできた連鎖で、我が家のまわりの蟻が死んでいくこととなる。
1〜2ミリ程度の生き物とはいえ、申し訳ない気持でいっぱいになる。
自分の生活の場を移動の道筋として蟻に開放したなら、
単に蟻達は1日程度で移動し終わっただろうか?
またはゴミ箱や色々なものに黒山のようにたかり、 やはり我慢ができずに殺すこととなっただろうか?
蟻の意図がわからないので、待つという手段はない。
蟻は、昆虫の中でハチ目に属す。
蜂の巣も人間の近くに陣取ると駆除の対象となる。
しかし、蜂や蟻に、人間の生活を考慮して巣を作る義務はない。
人間の害になるから、不愉快だから、という理由で生物を殺すことに対し、
申し訳ないと思う感性を、私は間違っていないと信じている。
自分の邪魔になるものは自分の判断で殺戮していいということこそ間違いだ。
きれいごとを言うつもりはない。
虫や動物が人間の生活を脅かす場合、殺すことは犯罪ではない。
食べる為に殺すことも勿論犯罪でない。
しかし、それは人間の当然の権利ではない。
たまに心の中で
「すまないね」
と思うくらいの感性が地球の未来には必要だ。