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  銭湯にて (2004.6/18)


ここ一年くらい近所の銭湯がお気に入りのスポットだ。
太陽がある時間内にフラっとつかりに行くのが好きで、女湯の天窓から差す西
日にポケーっとするのが最高だ。

ただし定番の『風呂上がりのコーヒー牛乳』は飲まない。
お腹を冷やして下痢をするからである。
さて、いつものように空いているある日の午後4時半の女湯でのことだ。
私が流している真隣にお婆さん(おばさん?)が座った。
今どきのスーパー銭湯と違って、私の行く銭湯は、カラン同士に仕切もなく、
固定式のシャワーなので、洗髪のお湯がどうしても隣の人にかかってしまう。
従って、よっぽど混んでいない限りは皆一つくらい間をあけるものである。
『こんなに空いてるのに何でくっついて座るかねぇ..この婆さんは..』
と思いながら髪を流していると、
 「しかし芸能人も大変だねぇ..アレだねぇ。清水健太郎なんかさぁ」
と突然お婆さんが会話を始めた。
そこは裸のつき合いというもので、適当に答えてみる。
 「ああ、また逮捕されましたね。3回めくらいかな。」
 「親も泣くよぅ!あんなんじゃ。」
 「いやまぁ、ホントそうですよ。とんでもないですよねぇ。」
お婆さんはシャワーを流しっぱなしにしながらしゃべっているので、
お湯が口に飛び込むせいか、何を言ってるのか半分は聞き取れない。
たかが風呂屋での世間話、何度も聞き返すのも不粋なので、どうとでも解釈で
きるような当たり障りのない返答を探す。
 「アラシっていう若いコいるでしょ?グループの」
 「あぁ、ジャニーズの?」
 「そうそう。それの左のほうにいつもいるコがさぁ」
 「う〜ん....左のほうですかぁ???ええっと..なんかちょっとフテクされた
ようなコですか?」
(嵐に誰がいるのか知らないのでデタラメに言ってみる)
 「そうそう!それよ!不良っぽいかんじの..。あのコなんかさぁ、コンサー
トでお客の女の子に『うるさい!』って言っちゃったんだってさぁ。キャーキ
ャーうるさいからって、ついついだって。」
 「へぇ、そうなんですか。」
 「で、楽屋で泣いてね。」
 「へ?そのコがですか?お客さんが?」
 「私が郷ひろみのコンサートに行くとね、ひろみは『会いたい気持が〜
(以下省略)』って歌詞を言いながら『皆さんにもっと会いたいけれど、ニュ
ーヨークにいるのであんまり会えないですよね。だからこの歌を皆さんに捧げ
たいんだ』って言うのよぉ!」
 「あぁ、『よろしく哀愁』ですね?」
 「そうそう!『よろしく哀愁』よ!」
 「やさしいですねぇ。郷ひろみさんって人格者なんですね。」
 「そうなのよ。昔の芸能人は『お客さまは神様です』って言って、お客さん
に『うるさい!』なんていうことはなかったのよ。」
 「郷ひろみさんは昔ながらの芸能界で生きてきたんですものねぇ..」
 「そう。苦労もしたの。だからニューヨークにいるのがちょうどイイのヨ。
だからさぁ、嵐のコも楽屋で見せた涙をみんなに見せてごらんなさいよ。
郷ひろみみたいに男らしく。そうすりゃみんな惚れ直すんじゃないの!」
 「はぁ、男らしくね...。郷ひろみさんはレベルが違いますねぇ...。」
 「そうなのよ!」

もう洗うところもなくなってしまい、ちょうど会話も一段落ついたので、
 「じゃあ、お先に失礼します。」
と挨拶して立ち上がる。
 「あまり無理しないでね。」
 「ありがとうございます!それじゃ。」
(へぇ?何のこっちゃ。ま、いいか)

郷ひろみさんを誉める時に無理しているように見えたのだろうか?
個人的には、郷ひろみさんに対して好きとか嫌いとかの感情は全くない。
ちなみにお婆さんはとても優しそうに最後のセリフを言ったので、 嫌味や皮
肉でないことだけは確かだった。
それとも、私、どこかヘンでした??

大人の会話術とは完成に時間を要するものだ。

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