いつの時代でも、子供の欲望を全て満たすのに小遣いは足りないもの。
当時のレコード1枚の値段は、シングル盤500円、アルバム2500円。
それに加えベイ・シティ・ローラーズ以降音楽雑誌を毎月買うようになり、
『ミュージックライフ』『音楽専科』各500円が毎月必要となった。
そうなるとシングル盤でさえ、片っ端から買うわけに行かないので、
ラジオで熱心に音楽番組をチェックし、厳選するようになった。
特に土曜日は学校が半日なので、FMのベストテン番組を聴くために急いで
帰宅したものだ。
当時はFM局が少なかったので、放送を聴いてからレコード店に行き、
「さっき○○という番組でかかっていた曲をください。」
と言うと、レコード店のおじさんがFMの放送曲一覧表を調べてくれた。
中でも思い出深いのは、クィーンの『You're My Best Friend』だ。
ラジオで初めて曲を聴いて、即レコード店に走った。
だいたいの曲名は覚えていたので、難なくシングル盤が見つかったのだが、
良心的なレコード店主が、
「本当にこの曲で合ってるかどうか、試聴してみましょう。」
と言って針を落とすと、いきなりイントロでノイズが入る。
「これは傷があるので、新しいのを取り寄せます。」
この曲が日本でヒットしたのは75〜6年頃で、私は小学5〜6年といったと
ころだろうか。傷なんかどうでもよく、早くレコードが欲しくて、
「いいです。すぐに聴きたいからこれでいいです。」
「いいえ!傷のついた商品なんて売れません。」
の押し問答をしたことがある。
この小さなレコード店のおじさんには、学校の帰りに雨宿りさせてもらった
り、コーヒーをごちそうになったりした。今、あの店はない。
さて、ここからクィーンに夢中になり、ブライアン・メイが浅草でおもち
ゃの琴を買ったと知って、浅草に行きミニチュアの琴を買ったこともある。
3〜4千円で、長さが50センチ程あったろうか?
そこそこ音も出たので、その気になって弾いたものである。
学校には雑誌の切り抜きを挿んだ下敷きを持っていくので、
当然クィーン好きの女の子同士で意気投合する。
親友となるのに時間はかからない。
今でも感謝しきれないほど有り難かったのは、その親友のお父さんがレコー
ド会社の偉い人で、最初に『オペラ座の夜』を自分で買った以外、別々の大
学に入り疎遠になってしまうまでの間、初期のアルバムまで遡って全てタダ
で頂いたことである。
私は元来遠慮がちな性質だが、当時、欲しいレコードは山ほどあり、
自分で購入できる数に限りがある。
本当に恥ずかしいのだが、クィーン以外にも色々ねだってしまった。
その中には、すぐ後に夢中になるレッド・ツェッペリンやイエスも含まれ、
私が所有する70年代ロック定番アルバム達に『見本盤』の判が押してあるの
はそういうわけである。
もしも、彼女がこれを読むことがあったら、
『またその話か。老人みたいにしつこいな。』
と、思うであろう。
しかし、私にとって単なるエピソードの域を超えているのが、この見本盤。
ことあるごとに蒸し返すのも友達として如何なものかと反省し、
もうしばらくは言わないようにします。
本当に、
ありがとう。