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  働く人、働かない人(2006.1/9)


 有名な話だが、全員働いているように見える蟻達の、実際には2割だけが
『よく働く』蟻で、2割は『まったく働かない』蟻なのだそうだ。
それ以外はそこそこ働いたり、何となく過ごしているらしい。
この比率が、集団としての作業効率を上げるという説もあり、
経営者の中で、こういう論をふまえている人達もいるようだ。
すなわち、全員が働き者では作業効率が最大にはならないということで、
ブラブラしている人も集団にはそこそこ必要ということになる。
 以前、バンドのメンバーでいた頃、わずかな間だが月給生活があった。
メンバー内での私は単なるベースプレイヤーだったので、
蟻の巣の法則も知らなかった頃、私達の中に諍いがあった。
私はバンドの中で何の役割も果たしていないので、
月給を受け取る権利はない、ということを私以外のメンバーが決定した。
バンドをやったことがある人ならわかるであろう。
曲を書いたり、アレンジ面で皆をリードしていく役割のメンバーは、
常にたくさんのことを背負い、忙しい。
何の下準備もせず、ポっと現場で楽器だけ弾いている人を見ると、
「何もしてないくせに」
と思うのであろう。
今の私は、あの頃より色々経験を積み、
どちら側の気持ちもわかるようになった。
月給の話は、結果的には、当時の事務所の社長が力になってくれて、
バンドをやめるまで頂くこととなった。
何年か続けてきたレストランのバイトを、
デビューして
月給をもらい始めてからやめていたので、
何の予告もなしに、事務所の社員に、
「今月から月給はありません。」
といきなり言われて困ったからである。
趣味人でコーヒーの好きな、社長という職の似合わないその人には、
バンドをやめた後にも、
CM音楽などの仕事を始めるきっかけを作ってもらったり、
言葉に尽くせないほど世話になった。
 また、学生時代、友達同士でホームパーティーをやった時のこと。
女性は手料理持ち寄りで、男性は飲みもの担当だったのだが、
私は直前に用事があったので、お酒と缶詰を持参したことがある。
普段から私は、大勢で料理したり、お運びしている中にうまく混ざることが
とても下手で、大勢いる時はあまり立ち働かない。
自分が中心になって段取りを組める時は効率の良い私だが、
人のペースにうまく入れないのだ。
そんなことで、作ったり運んだり洗ったりを殆ど手伝わず、
パーティーの流れで、みんなで車に分乗してドライヴに行った時も、
当時免許のなかった私は運転もしない。
何もしない人もそれなりに疲れるものである。
ついウトウトと寝転がってしまうと、
「いるんだよね。こういう何にもしない人。遅れてくるし、
料理は作ってこないし....」
という会話が聞こえてきた。
狸寝入りしていたわけではない。フと目が覚めた時、
こういう話がつい耳に飛び込んでくることがあるものである。
それに対し、もう一人が、
「いいや、パーティーにはこういう人って必要なもんだよ。」
と言ってくれていた。
起き上がるわけにも行かず、寝たフリをして聞いていたことを謝りたい。
 そういう青い話も有り難い話もすっかり忘れ、
最近何かと忙しく、ついつい、自分だけが忙しいような錯覚に陥り、
あの頃のことを思い出し、反省しついでにこの文章を書いている。
ブラブラしている人は大切なムードメーカーなことが多々ある。
もちろん、働かず酒を飲んでギャンブルにはまるといった極端な例を除く。
せかせかと働いている人の横で、
ノンビリした表情の人がいるのは大事なことである。
皆が忙しそうに立ち働いていると、
何もしていない人は罪悪感にとらわれやすい。
しかし、スペース的にも物理的にも、それほど人手を必要としていない場合、
最初に働きだした数人をのぞいて、そうそう後から仕事はない。
後から参加した人は、アタフタと働いているフリをしなければならない。
そのフリをうまくやらないと、
『何もしない人』『働かない人』
のレッテルを貼られることになる。
中心になって働いた人物に感謝することを忘れず、
働いている『フリ』をせず、正直に坐っていた人間を責めるのをやめたい。

『よく働く』自分が『ブラブラしてる人』に腹を立てている瞬間、
冷静にならなければ、と、たった今、自分を戒める。

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