午 睡

背に感じていた視線がすうっと途切れた。
動かし続けていた手を止めて、マイクロトフは静かに振り返る。
古びた寝台の上、ちいさな寝息を立て始めたカミューの姿にマイクロトフは微笑を浮かべた。
極力音を立てないよう立ち上がり、寝台の横に身を屈める。
柔らかい午後の日射しを受け、カミューは満足そうに眠っている。
金糸のように輝く栗色の髪に指を絡ませると、カミューは僅かに身じろいだ。
マイクロトフはしばらく息を潜め、彼の眠りを妨げなかったことを確認した後、ふわりと笑う。
カミューの寝顔を見下ろしながら、時にマイクロトフが浮かべる表情だった。
時折聞こえる遠いこどもの声以外、音はない。室内は暖かい陽光に満ちている。

……カミューは眠っている。


マイクロトフは微笑んでゆっくりとカミューの額に口付けると、再び文机に向かった。