野尻湖・近鉄前水草復元区にソウギョ侵入

 1時間の格闘の末に水草復元区内でソウギョを捕獲


二人がかりのソウギョの引き揚げ(2009.6.19)

 近鉄前水草復元区は一般参加型の復元活動として地域の方々の参加により2000〜01年に設置・植栽されました。また2004年には石積み湖岸前面の移行帯の設置やマコモの植栽が行われるなど、長年にわたる多くの方々の協力により現在に至っています。  この場所は過去に水草が分布した地点ですが、強い南風時に発生する湖流が地形の影響で一点に集中し、春先には10cmほどに伸びたヨシの芽が削り取られるなど、水草復元は難しいことがわかりました。従ってここで水草復元が成功すれば、野尻湖内での水草復元の大きな足がかりになると推定されました。粘り強く復元活動を続けた結果、2007年には抽水植物や沈水植物により450uの復元区全体がカバーされたことが確認されました。復元活動開始から8年間を要しましたが、野尻湖ではソウギョの食害を防げば、特別な土木工事を行わなくても水草帯復元が可能であることを示したことになります。
 この水草復元区はポリエチレン製網で囲んだ15m×30mの長方形の区画です。本年(2009)はこの復元区設置後、10年目に当たりますが、長い間に網の継ぎ目などに僅かなゆるみや隙間が出来たようです。
 2009年6月上旬から復元区内で水草の断片が浮かぶようになりましたが、広い復元区の中ではソウギョの存在が確認出来ず、しばらく様子を見ることになりました。その後、急速に水草が減少し、ソウギョの糞が確認されたので、野尻湖水草復元研究会員が急遽集まって、対策を検討しました。とはいっても網の補修以外に妙案が浮かばず、困惑していたところ、会員の一人がシュノーケリングでソウギョの追跡し、その行動パターンを把握してしました。そして実験区の網際までソウギョを追いつめ、タモ網で捕獲しました。その後、二人の会員が必死の思いで岸まで運びました。ソウギョはジャンプ力が強く、捕獲作業は注意が必要であり、まさに使命感に燃えた捕獲作業でした。

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   捕獲されたソウギョは全長119cm、体重16kgでした。今年度は釣りにより同様な個体が1匹捕獲されています。なお、最近数年間の年平均捕獲数は2匹程度で、捕獲は難しくなっています。
 さて今回の食害状況について以下ように極めて大まかな推定を行いました。ある抽水−沈水植物群落の現存量(文献値)をもとに計算すると、『ソウギョは毎日自分の体重と同じ量の水草を食べ、約10日間で450uの水草帯を食べ尽くした』ことになります。摂食量はかなり多く感じますが、ソウギョ養殖現場では更に多くの餌を与える場合もあるそうです。
 そこで野尻湖に水草復元区のような水草が分布したとし(沖積地形の沿岸部、水深6mまでを想定)、今回捕獲されたサイズのソウギョが100日間食害したと仮定すると、150匹ほどで食べ尽してしまうことになります。まさにすざましい食圧といえます。なお、実際には更に多くの要因を考慮して計算する必要があります。
以上から、野尻湖の水草帯復元を復元し、水環境・自然環境を保護するため、効率的なソウギョの捕獲法を確立し、地域に普及することが必要・不可欠であることがわかります。
 なお、食害を受けた水草復元区では地下茎を持つ植物の新たな発芽が始まっています。過去の例でも一度だけの食害では、このような植物は再度発芽可能ですが、繰り返し食害を受けると発芽出来なくなります。また種子や卵胞子からの発芽による回復が必要な植物もあり、埋没種子などからの発芽を待つことになります。
 昨年更新した実験施設での部分的な食害とあわせ、2回の食害は悲しい事態でしたが、今後の捕獲法検討に関する知見も含め、多くのデータが得られました。これらを元に更に検討を進めます。

---- 近鉄前水草復元区2008.7 ---------------------- 食害前(水位低下時)の近鉄前水草復元区2007.8.26
ポリエチレン製網で囲んだ水草復元区の外はソウギョによる食害で水草が1本も有りません。 ------



ソウギョによる食害直後の水草復元区2009.6.19 ---- 地下茎からの発芽によるヒメガマの食害からの回復2009.7.31 -


野尻湖水草復元研究会が 県知事賞そして 日本植物学会学会賞特別賞を受賞しました。