今一歩さん物語
小休止〜Partner〜
よく晴れた初夏の夜、1人の少年(少女?)が山を登っていた。(以下A)
Aは、腰まであろうかと思われるウエーブがかった赤毛をさも邪魔そうに払う。
歳は十歳ぐらいであろうか。
汗を拭いながら、ぼやいていた。
「疲れた…歩行は不得手なのに……。」
同じ頃、ちょうど反対側から、もう1人少年(少女?)が山を登っていた(以下B)
こっちも十歳ぐらいだろう。黒髪で人形のような端整な顔立ちをしている。
Bは仮面のような無表情さでなにやら呟いている。
「2034…2035…2036…2037……。」
彼は。自分の歩数を数えていた。
そして、二人は頂上付近で(ぴったり山頂じゃなかったのはAがバテたため)ついに出会った。
「………。」
Bは何事もなかったかのように、今来た道を戻っていく。
「うそっ、ちょい待った…!!!待てってば、きーてる!!!?」
Aはなぜか慌てて呼び止めるが、Bはひたすら無視する。
「ね、ねぇっ、君もハーフだろ?宇宙人の。」
Aは宇宙人のハーフなのだ。
「えっと…私はちなみに火星。」
「冥王星。」
Bはどうやら冥王星人のハーフらしい。
「へぇ…で、さっきから、君、どんどん早歩きになってるけど、何で?」
「撒くためだ。」
「誰を?」
Bは無表情のまま、Aを指差した。
「へ…私…?まぁ、いいや、ついていこう。」
「来るな。」
「いーじゃん、友達だろっ!?」
「邪魔。」
「あ、親友ってやつ!?」
「失せろ。」
そう言っている間にも、二人の歩く速さは加速してゆく。
行きの四分の一ぐらいの早さで山を下りきり(注・走らずに)二人はそのまま街の中へと入っていった。
「ここで会ったのも何かの縁ってことで、一緒に旅しよう。」
Aは明るくもちかける。
「断る。」
一息つくまもなく、Bが答える。
「何で?」
「生活力なさそうだから。」
二人はすごいスピードで夜の繁華街を歩き去っていく。
結果、ラブラブなカップルはフリフリでチュ−の直前で止まり、酔っ払ったおじさんは電柱にお辞儀を仕掛け、切符を切っていた警官は、あっけに取られ、その隙に路駐の車に逃げられた。
「とりあえず、自己紹介。私はチホビビンバ。君は?」
「教えたくない。」
「いーじゃないか、お互い珍しいもの同士だろう?」
「関係ない。どっか行け。」
友好的とは思えない会話を続けつつ、二人はとにかく、やたらめったら歩いた。(しゃべったのはほとんどチホビビンバ)
そして、その後、何年かして、二人が始めて腰を落ち着けたのは、秘境のススキの原っぱのど真ん中の大きく、古いお屋敷の屋根裏だった(モチ、無許可)
そして、同じ頃、チホビビンバは連れの名前を知った(半ば強引に)
「イマイマータ、ご飯くれ。」
「断る。」
「いーじゃん、ご飯ぐらい…って、おまえ、カレー食べてんじゃん!!」
「残りはない。」
「おいおいおい〜、そんなこと言って、私がショックで家出してもいいのか?」
「本望だ。」
「うわっ、今のはショックだぞ!!?長年連れ添ってきた友をそんな風に思っていたのか!!!?」
「いや。」
「おまえって……いいやつだなァ…!!!」
「目障りだと思っている。」
「ぐさっっっ。」
かくして、この二人組(ていうかチホビビンバ)は主役の座を目指して、暴走(迷走)を始めた(らしい)。