『 週刊 Hanko 』 566号

◆手紙◆


 桜が一気に満開になった、と思ったらしとしと雨が降って、思わず「もったいない」!(今や世界の共通語?)やっと青空をバックに咲き誇る桜を見ることができました。もう散り始めたのもありますが、週末までもつかなぁ。

◆手紙◆
 実家の物置の整理で懐かしい品々が出てきた話を以前しましたが、おおかたは片づいたものの、いまだ細々した物が少し残っていて、斎藤家の方に引き取った荷物も処分に悩む毎日です。ため続けた荷物の整理がこんなにも大変かと実感し、出来るだけ身軽になろう!と切実に思っているのですが、今まで生きてきた証ともいえる品々、思い切るのは難しい!
 中でも手紙。これこそは、死んでから子供に処分させるのではなく、自分でなんとかしなくては…!確か結婚後に一度、大量の手紙を処分したハズなんだけど、まだまだありました、衣装ケースに1箱分…。ちゃんと差出人別に分けてとってあるものだから、大事な(少なくとも受け取った時嬉しかった)ものばかり。燃やすとしても、ちゃんと読んでから…。と覚悟して始めたので、おかげで一人こっそりドラマチックな夜をいくつも過ごすことができました。 (^^;)

 手紙の時代は、学生〜就職したての頃。恋や職場の悩み多きお年頃とあって、みんな詩人で哲学者で、おもしろーい。なつかし〜い、感動〜!…色々あります。
 おぉ、衝撃の告白!(…30年も独りでいたんだから、たまにはこんなのもなくちゃね。)でもこれはな〜。「Aさんと別れてBさんと付き合ったけどだめで、CさんもDさんもだめだった、だけどHankoちゃんこそ本命だ!」…って、誰も信じないでしょ。後輩としてはかわいいコだったけど。

 今でも嬉しく読めるのは、「誰かに何かを話したいけど、誰に話していいかわからないからとりあえずHankoちゃんに書く」…っていう手紙かな。仕事する気になれず腐っていた時、10歳の子供が頑張ってる姿に感動して立ち直った話とか、昔別れた(今でも好きな)彼女の話とか、お気に入りの場所でぼーっとしながら書いたのとか、旅先からとか、全然わけわかんなさ加減が心情を物語っているのとか…。すごく字がぐしゃぐしゃでも「とにかくたくさん書きたくて」…。手書きの手紙って、やっぱり好きだな〜。当時はペンだこが痛くなるほど手紙を書きまくったものです…。

 若い頃って、みんなこんなに感性豊かだったんだ…。でも本当に詩人の友達が、「その年で、小学生の作文みたいな手紙を書くんじゃない!」と怒って(呆れて?)いるので、私はつまんないこと書いてたんだろうな〜。
 あ、恩師からの手紙も。Wao!! 20年前の恩師って、今の私より若かったりするのね?「今日、貴女の話をしながら学生と飲みました」う、悪口でも嬉しい!(*_*)「…取り壊された校舎の跡を歩きながら、M先生と無言で別れました」…高校で一番お世話になった先生、お元気でしょうか。あ、Y先生とY子先生発見!1歳と3歳の男の子(今は大学生)の子育て中!(^^)。上京したての私目に、仕事のみならず子育ての心構えもきっちり説いて下さっています。昔も今も人生の師!うれしいなぁ。

 捨てられないのは、今は亡き人からの手紙。中でも、おばあちゃんからの手紙は何度も読み返しました。横浜での生活で精一杯、田舎の祖父母のことを思いやる余裕など無かった頃の手紙だけに、「二人暮らしは淋しいので、(私や弟が)遊びに来るのを楽しみにしています」なんて読むと、胸が詰まります。もっと会いに行けば良かった…。私はどんな返事を書いたのだろう……。
 私の子供たちを可愛がる母の姿を見るにつけ、おばあちゃんも、こんなふうに私の事を思ってくれてたのかなぁ…とふと考えることがありましたが、こうして本人の字で書かれた手紙を読むと、ぐっとこたえます。ごめんね、おばあちゃん。

 かくして、手紙の整理は本当に時間がかかる!やはり、処分できないものもけっこうあるなぁ。焼ききれなかった手紙は、そっくり棺桶の中に入れてもらいましょう。(^^;)

 それにしても、その後の「メール」も含めて、私は何万通の手紙を書いたのだろう。会社で隣の席の人とでも濃厚なメールをやりとりしていた私は(だって、手紙の方が話しやすいことだってあるじゃない?)、結婚当初、手紙やメールを書いてもいっこうに返事をくれない旦那様にかなり不満を持った事もありましたが、「一緒に住んでいるのになぜ手紙を書くの?」という言い分に、諦めた、と言うよりは慣れてきたところかな。でも彼の方も「フォーレの良さを理解しない人と結婚してしまった」と、口には出さねど多少がっかりしてることだろうから、おあいこですね。

 手紙をネタにするのはどうか…と思いましたが、1枚ずつゆれる炎になって消えていく、愛しい手紙達を見送っていたら、どうしても書き残しておきたくて。
 独りで淋しい頃の私を慰め励まし支えてくれた手紙達、ありがとう。そしてその手紙を書いてくれた親愛なる「師」や「友」たちが、幸せに暮らしていますようにと祈りつつ…。

2005. 4. 14  斎藤 範子(Hanko)



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