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 ◇「わたしの天国でまた会いましょうね」

クリステル&イザベル・ツァヘルト(集英社文庫)

+-+- あらすじ -+-+

  15歳のイザベルに思いもかけない悪性腫瘍の宣告。男兄弟の真ん中の一人娘として、家族に愛されて育った少女の生活は一変した。

 

 病院での化学治療、副作用の苦しみ。しかし彼女は生きる希望を失わず、最後まで病魔と戦い続けた。そしてほのかな恋。しかし一年後彼女は尊厳死を選ぶ――この16歳の厳粛な選択は今もなお世界中で感動の嵐を巻き起こしている。

+-+- 感想 -+-+

 素晴らしい作品だった。イザベルは闘病生活を通じて、色々なものを得ていく。
 失ったものは何もないように僕は感じた。彼女の前向きで未来を見つづけたその姿勢は結構凹みやすい僕に勇気と力強さを与えてくれた。

 

 「きっと良くなる!!」

 

 彼女の奇蹟を信じるその真摯な態度に胸を打たれ、そして僕は自分を見つめる大事さ、そして絶望的な現状を認識しつつも、未来への希望を失わない肯定力の強さに、自分もこうでありたいといつのまにかに思うようになっていた。

 彼女に関わる人は皆彼女に惹かれるのも、その彼女の誠実さや愛くるしさ、そして希望を捨てない自己肯定力の強さに起因しているような気がする。彼女は「自分の死」を認識しつつも、「奇蹟」を信じていたし、「生きる事」への執着ももっていた。自分がもう助からないという事実を認識しながらも、その姿勢を保てる事は多くの生きている人への勇気になると思う。

 

 「尊厳死」というものがどういうものであるのか、それを語っても仕方ない。しかし「生きたい!」という意欲を持ちながらも、「死」という現実を受け入れ、自分の残された短い生を幸福に過ごしたいというその当人の意志の高さとそしてまわりの人間達の理解の深さに僕はただ深く感動した。

 彼女は闘病生活を通じて、一人の少女から成熟した素晴らしい女性へと成長していた。そしてその彼女の姿が誰もが直面する「死」への姿勢の模範になると僕は思う。
「切なさ&元気が出る本」で僕の中ではベスト3に入る。

 「幸せにはたいしたものはいらない 楽しい人、それは王者!」
イザベルは闘病生活の中でそう明るく言った。彼女の姿、言葉は僕の勇気と優しさ、そして生きていく姿勢となるように僕は努力をしたい。

 

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