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 ◇「私たちが好きだったこと」 宮本輝 (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 工業デザイナーを目指す私、昆虫に魅入られた写真家のロバ、不安神経症を乗り越え、医者を志す愛子、美容師として活躍する曜子。偶然一つのマンションで暮らす事になった四人は、共に夢を語り、励ましあい、二組の愛が生まれる。しかし、互いの幸せを願う優しい心根が苦しさの種をまき、エゴを捨てて得た究極の愛が貌を変えていく……。無償の青春を描く長編小説。

+-+- 感想 -+-+

 宮本輝の作品初挑戦で、僕は完全に宮本輝の術中に嵌った。読みやすい文体と、ぐいぐいと読者を引き込む巧妙なプロットは流石と言うしかない。

 

 ひょんな事から男二人女二人という奇妙な共同生活を始めるキャラクター達。誰にでも小さくそして根深い問題がある。そして共同生活によって、彼らはその問題を励ましあったり、支えあったりしながら、乗り越えていく。しかし乗り越えて、新たな局面になった時、「生きる」と言う事は四人の関係をそのまま維持させてはくれなかった。

 

 読了後はもう僕としてはひどくその物語に引き込まれていたから、なかなかうまく抜け出せずに、呆然自失。切ないような、苦しいような、だけど生きるってこういうことなんだと思ってしまう、ある種のカオスの中に僕は存在した。「生きる」を重点に描いた青春小説なのかもしれない。

 

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