アーヴィングの自伝的小説なのは頷ける。どうやって作家J・アーヴィングが生まれたのか、いかにして彼が現代アメリカ文学の旗印になったのか、そして彼はどのようにして作品に接しているのか、それがとても良く描けていたし、それと同時に、彼は様々な社会の持つ残酷性を描き出し、それに苦悩したのかを描いていた。
久しぶりの純文学だったけど、100Pを過ぎた辺りから、もう、息つく暇もなく僕は読み進めてしまった。そう言えば、純文学とは社会の本質を描く努力をしたものであったのだなと思わされた。ただし、それが他の大衆文学よりも優れているとか、そういう意味においてではないのだけど。
主人公のガープは優れた作家の資質を有していたために、様々な落とし穴にはまってしまい、そして原点を見失ってしまう。しかし、そこからすでに作家としての再生が行われているように思えた。現代アメリカとそして現代文学界を見事に描いた作品だと思う。
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