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 ◇「白い犬とワルツを」 テリー・ケイ (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に冒された老人サムは温かい子供達の思いやりに感謝しながらも、一人で余生を生きていこうとする。

 妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして…

+-+- 感想 -+-+

 僕が今まで読んだ切ない本とは異なった切なさだった。それは決して避けることのできない運命を澄んだ瞳で見つめているからこそ、生まれてくる切なさなのかもしれない。すごく辛く、そしてすごく切ない。そうとしか表現できないものだと思う。

 

 人は生まれた時から、死に向かって歩み始める。これは誰も避けられない。そして妻の死によって、主人公であるサムは死というものを穏やかに見つめながら、自分と妻の過去を振り返りながら、ある種の決着をつけようとする。そしてその決着は誰もがつけなければならない種類のものだろう。

 

 所々に挿入される日記や彼の追憶は、もう戻らない過去への羨望でもあり、現実への関わり方でもあり、自分が嫌でも年老いてしまったという事をサムに認識させる。そして同年代の友人達が次々に死んでいく。せめて楽に死にたい。そう願う言葉にすごく辛く僕は感じた。そう感じるのはきっとまだ僕が「老い先短い」という年齢に達していないからだろう。

 しかしこんな偏屈でも力強いお年寄りになりたいなと思う。読んでいても、元気だし、茶目っ気もあるし、すごく爽やか。潔いと表現できるくらいに、素直に死を見つめ、そして「白い犬」と時を過ごす。僕も「白い犬」とワルツを踊れるような老人になれるのだろうか?自分の「白い犬」を見る事ができるのだろうか?今の調子だとちょっと危ないなーと感じながら、僕はいつのまにかにこの小説に切なくさせられながらも、元気付けられた。

 

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