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 ◇「とり残されて」 宮部みゆき (文春文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 勤め先の小学校で、ヒロインは「あそぼ」と囁く子供の幻に出会う。そんな折、校内プールに女性の死体が…。その謎に迫る表題作ほか、夢の場所探しから始まる内面の旅を描いて名作の聞こえ高い「たった一人」など六篇を収録。

 

 巧みな伏線、鮮やかな舞台設定。清新にして熟達の筆致をお楽しみにしてください。

+-+- 感想 -+-+

 現代のホラー(?)である。

 「本所深川ふしぎ草子」が時代小説で幽霊を描いたのなら、こちらはその現代版。

 しかし、連作短編というわけではなく、短編である。

 

 個人的には「いつも二人で」という短編に非常に感動した。

 とにかく、戸惑い、そして理解、後悔などの様々な感情を一人の人間を器にして二人の心の葛藤、ぶつかり合い、理解、融合などを非常に楽しめた。最後の終り方も意外だったし、ちょっと哀しかった。

 

 あとは、「私の死んだ後に」も良かった。

 壊れていた人間の再生の記録でもあり、心の触れ合いが非常に温かかった。

 誰かを思う気持ちがこれだけ人を助けるんだと思ったし、心の戒めがどれだけ人を苦しめるのかも良くわかった。しかし、主人公には良かったのかもしれない。「彼女」に会えたのだから…

 

 現代のホラーをうまくアレンジして、これほどに温かい物語を作れる宮部みゆきに脱帽。

 

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