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 ◇「いちばん初めにあった海」 加納朋子 (角川文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引越しの準備を始めた。

 その最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった海』。

 読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が…。

 差出人は<YUKI>。

 だが、千波にはこの人物にまったく心当たりが無い。しかも開封すると、「私も人を殺したことがあるから」という謎めいた内容が書かれていた。

 

 <YUKI>とは誰なのか?

 なぜ、ふと目を惹いたこの本に手紙が挟まれていたのか?

 他、中編一編。

+-+- 感想 -+-+

 ミステリである。

 すごくほんわかできて、かなし切ないミステリ。

 たとえるなら、北本薫などはこの部類に入るかもしれない。

 人生の中で引き起こされる様々な出来事は姿形を変えて、ミステリとして人に物語るのかもしれない。

 

 表題作「いちばん初めにあった海」と「化石の樹」はどちらとも人にとって非常に深く関わりあう自然、つまり「海」そして「木」を焦点にしているのにも興味深い。

 自然へのコミットメントというメッセージを持っているとも考えられる。

 

 生と死の狭間で揺れ動く心。

 生きることに真剣なために戸惑い、傷つき、そして周りの人によって、そして何より自分が傷に対して打ち勝つことによって、再生されていく主人公たちの姿がとても胸をうった。

 

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