僕たちはユーゴから距離的にも文化的にもとても離れている。
だから、彼らの実情はマスコミを通じてでしかわからない。
だが、そのマスコミが公正な立場で、そして正しい方法でユーゴの実情を放送しなかったら、どうなるだろう?
この本ではマスコミに対する痛烈な批判を内包していると思う。
視聴率獲得のために、重大な事実も故意に放送されない現状。それを赤裸々に語っていた。
フィールドワークでユーゴを歩き回り、バルカンの火薬庫の現状を、サッカーを通じて、描き出す。そこには民族同士の憎みあいが存在したのではなく、憎みあわされたものたちの姿が多かった。そして絶望的な現状を前に、彼らはサッカーに希望を見出していた。
これほどまでにこの国ではサッカーを愛しているのか…
「政治とスポーツは別だが、表裏の関係でもある」このユーゴで人の希望を背負ったプレイヤーたち、そして希望を託した民衆たちの悲哀が非常に僕は辛かった。
日本人はあまりにも国際的意識が乏しかったからだ。
是非ともユーゴの現状に興味のある人は読んでもらいたい。サッカーファンも読んでもらいたい。この本は雄弁に僕たちに話し掛けてくるだろう。
|