△booklist top

 

 ◇「ガラスの天井」 辻仁成 (集英社文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

  「このエッセイは明らかに小説家辻仁成のゼロ地点を物語る参考書のようなもの」(『文庫化によせて』より)

 雪の降りしきる北の街の子供部屋での体験、高校時代に遭遇したケルアックの「路上」。

 東君平さんが僕にそっと囁いた言葉。

 そして東京の雑踏を見つめる僕――孤独を友としてきた心の奇跡を、自画像を描くようにつづる。

+-+- 感想 -+-+

 辻仁成のエッセイを読むと、なぜか自分の過去とフィードバックすることがある。

 もちろん、経験はまったく違うが、それで自分の見ていた角度や色彩が似ているのである。それはたぶん、きっと他の人も似通った部分があるだろう。僕とは違う部分で。

 

 辻仁成のエッセイは、シラケ世代と呼ばれる不可解に思われている世代の描写がうまい。彼自身、その世代だし、うまくシラケ世代に影響を与えた文化にコミットしたからだろう。 僕も彼の考え方には惹かれるものがあるし、共感も出来る。

 

 日本社会の中でのアイデンティティ。

 辻仁成の小説を書くという事の意味。

 孤独であること、友達という存在。

 自分自身のことと、自分と社会のコミットのこと。

 

 共闘以前の世代にはたぶん共感しにくいが、それ以降の人間ならたぶん共感しやすいだろう。高度化された社会の中で僕たちが僕たちであるための生き方を辻仁成は自分自身のことを踏まえて書いているように思える。

 

△Topに戻る△