中編が三作ということもあり、前作とは違って、非常に描写の密度が濃くなっている。個人的には前作よりもこちらの方が僕の性には合っているような気がする。日本推理作家協会賞受賞も頷けるクォリティだ。
落語を通じて解かれていく様もとても心地よいものがある。
主人公と円紫師匠との駆け引きもなかなか見物である。
「六月の花嫁」は話の終り方がとても好きだった。ただ、今回はやはり表題作である「夜の蝉」だろう。似ているようで似ていない…でもやっぱり似ている!?
姉と妹。
差異の部分が目立ってしまい、同じところがかすんでしまう。同時に、過去から行き違ってしまった姉妹の心が一つの事件をきっかけに軌道修正されていく様が非常に見事であり、ついつい感動してしまった。
たぶん一人っ子以外の方なら、共感を覚えるだろうし、何か大切な友人を些細な行き違いで失って人にも訴えかけるものがあるだろう。
「空飛ぶ馬」でいまいちでも、是非、この二作目は読んで欲しい。それで合わなかったら、たぶん、このシリーズは諦めて欲しいが、もしいいなと思えたなら、きっとこのシリーズとうまく付き合っていけるだろう。
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