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 ◇「閉鎖のシステム」 秋田禎信 (富士見ミステリー文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 鳩時計の鳩を、また見逃した。

 8時、9時、そして今。――俺は鳩に負かされている。

 残業と勝ちつづける鳩にため息をつき、撞久屋市論悟は呟いた。

 「死んじゃおうかな。いや、こんなんで死んじゃ駄目か」

 

 その日、巨大ショッピングモール「プラーザ」に異変が起きた。

 停電。シャッターが降り、静謐が支配するビルに残されたのはそこに店を出す論悟、香澄に、高校生の康一と教子。まるで、出口の無い迷路のような「プラーザ」を、彼らはさまよう。

 

 そして暗闇の中、突然に犯罪は始まった。

 「プラーザ」に犯人が?

 閉ざされた空間で緊迫は高まっていく!!

+-+- 感想 -+-+

 「魔術士オーフェン」の著者がミステリ&サスペンスに挑む。

 これだけでも、かなり期待が持てる。

 キャラクターもやはりどこかぶっ飛んでいて、特に論悟なんかはぶっ飛びすぎているが、ごく稀にマトモなことを言う。まぁ、彼の主人公って意外とそうかもしれないけれど。

 

 閉ざされた空間で、視界はすっかり闇に支配されている。

 恐怖のわくシチュエーションで、登場人物たちの個性が輝くのはさすが秋田さんと思った。

 闇の中で描写が難しい中、心理描写も非常に巧みにもちいていたとも感じた。

 

 徐々にクライマックスに従って、闇に支配されつつある精神。

 膨らむ恐怖。

 徐々に緊迫感が膨れ上がり、息もつかせぬままに、クライマックスを書き上げたその筆力には舌を巻く思いだった。個性的なキャラクタのため、そのキャラクタに合う合わないでかなり評価が変わると思うが、サスペンスとしての描写力は一流だと僕は思ったし、キャラクタも愛嬌があって、好きだ。

 

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