恩田陸は仙台生まれらしく、非常に東北の片田舎の描写がうまかった。僕自身、東北出身であったから、この舞台になっている町に非常に親近感を覚えたし、同時に、僕の田舎をも思い出させた。そういう理由があるからかもしれないけれど、この舞台設定の絶妙さに僕は何度も感心したり、納得したりで頷かされた。
さて、ジャンルはホラーである。
僕の苦手なホラーだけど、血が出てくるわけではないし、虐殺されるわけでもない。
しかし、理由のわからない不安と日常の不安が非常に複雑に絡まりあうスタイルはホラーといってもいいだおる。
この理由のわからない不安が徐々に自分自身にもフィードバックしていき、10代の頃の理由の無い怒り、不安、戸惑いなどを思い出させてくれた。
平凡な日常、ゆったりとした時間、自分のアイデンティティ。
様々な現実の前に、将来を意識し始めるこの高校時代をうまく描いていると感じた。
ホラーであり、青春小説でもあるといえるかもしれない。
|