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 ◇「嗤う伊右衛門」 京極夏彦 (中央公論新社)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 幽晦との境界が――破れている。

 内部の薄明が昏黒に洩れている。

 ならばそこから夜が染みて来る。

 生まれてこのかた、笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。

 疱瘡を病み、顔崩れても、凛として正しさを失わない女、岩――。

 江戸の闇に開く悪の華、怪談世界に鬼才が挑む!!

 泉鏡花文学賞受賞作。

+-+- 感想 -+-+

 京極夏彦やっぱり凄い…

 そう、再認識させられる作品だった。

 それぞれの人の描写から、徐々に物語を発展させていく方法で、それぞれの登場人物たちを描ききっている。

 狂った思考、情念、諦観…

 慄然とするほどの心理描写がすごい。

 そしてその心理描写で確立された一人一人の個性が徐々に絡まりあっていく。

 

 「四谷怪談」をモチーフに京極夏彦が純愛というスパイスを加味させた傑作だと思う。

 怖くて、狂っていたけれど、その先にある透明な想いは最後の最後で昇華されていった。ホラー(怪談)であり、ミステリである、この本を夏に読んだのは正解だったと思う。寝苦しい夜、慄然とする展開に秋を感じさせるし、またちょっぴり夏の夜の短さに感謝をするからだ。

 

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