現実では何者でもない自分。
子供の頃に描いた夢、憧れた未来を置いてきぼりにして、ただ一日を過ごしていく。
そうして二十代が終ろうとしている今、鏡に映る自分の姿に主人公は愕然とする。
彼の中のベレンコは確かにまだ存在した。しかし、彼の中のベレンコはまだ飛翔していない。
自分を偽っていた主人公。
絶望の淵で、青春が終る間際で、彼は自分を変えようと必死にもがたクロニクルである。
大都会東京が生み出す孤独の中で、「亡命者」を夢見る人間たちの想いが交錯する。
現代日本が抱える闇をうまく描き出していると思う。
そして、人間の基本的な謎。
人はどこから来て、どこへ行くのか?
という疑問に真っ向から主人公が向き合っているのがいい。
「アナタノカケラヲウメタイ」
ドキリとしたフレーズだった。
物悲しくも、尊い言葉のように思えたからだ。
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