まず、僕はこの本のエンディングを迎えた時、真保裕一ってすごい作家だなと素直に思った。つまり、結末の持っていき方が絶妙であり、これなら、山本周五郎賞と日本推理作家協会賞のW受賞も当然かもしれないと思うほどだった。
そして、改めて思ったのは、この人のプロットの緻密さだった。
複雑に織り成す構成をここまでうまく絡めることの出来る作家はそう多くはない。
ある種、映像的とも言える描写がその緊迫した展開のストーリーテリングにはぴったりなのだ。
物語は、笑いもあるけれど、それよりも、主人公たちの成長という点が非常にうまく描けていたと思う。
主人公やその仲間たちが大きな1つの壁に立ち向かい、その途中で苦労してきたことがうまく彼らの血となり肉となっているのだ。特に主人公の最後のパートでの、先人たちへの思いは非常にぐっとくるものがある。
偽札造り自体、失敗を成功の糧にしていたという点では同じであり、それがオーバーラップして、彼らの成長を促したのかもしれない。
サスペンスでもあり、1つのことに打ち込んだという点では青春小説的とも言えるこの作品は、近年でも指折りのサスペンス小説だと思う。
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