世間一般に不道徳もしくは好ましくない事だとしても、当人が真摯であり続け、その不道徳さに誠実であったのなら、それはその人当人にとっては美徳だという三島の主張を感じる。人は社会では不道徳とされているものに、興味があるからこそ、強く反発するのであって、それはいつの時代も変わらないものかもしれない。僕は僕の中に美徳が存在しているのかわからない。ただその「美徳」は自分の中できっと誇り高くて、譲れない存在なのだろうという事だけはわかる。
登場人物たちを通じて三島は語りかけているように思える。自らの美徳を持て、たとえそれが不道徳であっても大切な何かを守るためのなら。そんな無言の言葉を僕は聞いたような気がした。
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