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 ◇「美徳のよろめき」 三島由紀夫 (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 生まれも躾もいい優雅なヒロイン倉越夫人節子の無垢な魂にとって、姦通とは異邦の珍しい宝石のようにしか感得されていなかったが……。作者は精緻な技巧を凝らした人工の美の世界に、聖女にも似た不貞の人妻を配し、姦通という背徳の銅貨を魂のエレガンスという美徳の金貨へと、見事に錬金してみせる。“よろめき”という流行語を生み、大きな話題をよんだ作品。

+-+- 感想 -+-+

 世間一般に不道徳もしくは好ましくない事だとしても、当人が真摯であり続け、その不道徳さに誠実であったのなら、それはその人当人にとっては美徳だという三島の主張を感じる。人は社会では不道徳とされているものに、興味があるからこそ、強く反発するのであって、それはいつの時代も変わらないものかもしれない。僕は僕の中に美徳が存在しているのかわからない。ただその「美徳」は自分の中できっと誇り高くて、譲れない存在なのだろうという事だけはわかる。

 

 登場人物たちを通じて三島は語りかけているように思える。自らの美徳を持て、たとえそれが不道徳であっても大切な何かを守るためのなら。そんな無言の言葉を僕は聞いたような気がした。

 

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