◇「天夢航海」 谷山由紀 （朝日ソノラマ文庫）  ◇

+-+- あらすじ -+-+

　両親の離婚で都会から地方の女子校に転入したあさみは、どうしてもクラスに馴染む事が出来なかった。そんな時、彼女は「天夢界紀行」という小説に出会い、その作品世界に強く惹かれていく。

　それはどこか別の星にあるパラダイス――天夢界からの迎えの船を、望郷の思いに身を焦がしながらこの地上で待つ天夢界人たちの物語。

　自分にも迎えの船が来る事を願うあさみは、ある日、本当に天夢界行きの船のチケットを手に入れてしまった！？天夢界に憧れる少女たちを描いた連作短編集。

+-+- 感想 -+-+

　天夢界。

　それはあの夜空に輝く星々のどこかの世界の事なのだろうか？

　少女たちはとても平凡な生活にうんざりとし、高校という小さな社会でそれぞれ悩みを持ちながら、天夢界の物語に目を輝かせる。

　平々凡々な毎日、そしてそれに埋もれる自分。

　学校という小さな社会の中で、自分と他者の微妙なズレに苦悩しながら、同胞たちを追い求める。

　そんな中、彼女たちは一通のチケットを手に入れる。

　天夢界へ！！

　彼女たちが天夢界に思いをはせた時、世界と彼女たちのコミットメントが始まった。

　他者と自分。

　コミットメントに悩む青春時代をファンタジーに昇華させた青春小説。