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 ◇「天使の骨」 中山可穂 (集英社文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 ぼろぼろの守護天使たちがわたしにつきまとう……。

 人生の全てをかけた劇団を失い、世捨て人のように暮らす劇作家ミチル。

 絶望の果てに彼女は天使の幻覚を見るようになる。

 

 この天使たちを葬るために――。

 イスタンブールからリスボンへ、そしてパリへ。

 ヨーロッパを彷徨うミチル。再生の光は果たして見つかるのか?

 魂の巡礼を鮮烈に描く青春小説の傑作。

 第六回朝日新人文学賞受賞作。

+-+- 感想 -+-+

 強烈な世界観だった。

 ずっしりと重たい闇を背負った主人公が見始めた天使たち。

 このギャップに僕は魅了された。

 どこか厭世的で、破滅的な思考をした主人公が織り成す日常は天使すらも嗚咽した。

 

 そして、ヨーロッパへ。

 僕自身がミチルの旅したところに行ったことがあるからだろうか?

 そこにはヨーロッパの匂いがあった。

 イスタンブールの殺人的な交通、トルコ人の笑顔。

 ギリシアの終わりの美術や抜けるような青空と暑さ。

 そんなヴィヴィッドがミチルの身体に染み込み、読み手に染み込んだ。

 

 タイトルも魅惑的だけれど、その世界観は非常に妖しく、とてもピュアだった。宝塚的妖しさを内包した作風は、男性は共感できないかもしれないけれど、女性ならとても共感できる内容だろう。

 

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