せつらは孤高である。
何をいまさらとこのシリーズの読者なら思うだろう。
そしてこの本に出てくる登場人物たちも多かれ少なかれ孤独であるには違いない。
いや、もしかすると魔界都市の住人は程度の差こそあれ皆孤独なのかもしれない。
孤独を抱えている住人が家族を形成するその姿にせつらは何を思い、妖糸を放つのだろう。
妹と行き違ってしまった兄は何を思い、魔界都市に生きるのか。
忽然と登場した身寄りのない少年は養ってくれる人を見つめ、何を思うのか?
…そして、せつらを知る暮葉という男は孤高のせつらを前にして何を思い出すのか?
四編の短編に登場する人間たちの前にせつらはやはり茫洋と、時として冷然と立つ。
孤独は魔界都市のブルースに他ならない。
温かく、そして悲劇的なのだ。
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