ほんのりと何かに包まれている。優しい悲しみ。ぼんやりした悲しみ。どう表現していいのかわからない。だけど何かに包まれている。そう感じる。急激な変化も、てきぱきとした行動も、そんなの必要ない。ただ必要なのはゆっくりとでもいいから、その現実を受け止められる自分になるだけ。
春のような柔らかい悲しみ。僕の中にあるあまり顔の出さない自分がこういう時にこっそりそういう悲しみと同調してしまう。しかしその感情は薄いヴェールに包まれていて、どこか夢のような錯覚をする。
好きだよ。今だけはそう素直に言えると思えてくる小説。
終わりの中から微笑みと好きを拾える恋愛小説だと思える。
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