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 ◇「雪を待つ八月」 狗飼恭子 (幻冬社文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 「他に好きな人ができた」という年下の恋人・雪道の告白で、二年にわたる同棲生活が終ろうとしている。彼が出て行く日まであと一ヶ月。

 恋のはかなさを嘆き、彼が好きになった人を想像する優美は、八月の空に雪が降るような奇蹟が起こることを祈る――。

 世界中で一番近くて遠い二人の切ないけれど暖かい恋物語。

+-+- 感想 -+-+

  ほんのりと何かに包まれている。優しい悲しみ。ぼんやりした悲しみ。どう表現していいのかわからない。だけど何かに包まれている。そう感じる。急激な変化も、てきぱきとした行動も、そんなの必要ない。ただ必要なのはゆっくりとでもいいから、その現実を受け止められる自分になるだけ。

 

 春のような柔らかい悲しみ。僕の中にあるあまり顔の出さない自分がこういう時にこっそりそういう悲しみと同調してしまう。しかしその感情は薄いヴェールに包まれていて、どこか夢のような錯覚をする。

 

 好きだよ。今だけはそう素直に言えると思えてくる小説。

 終わりの中から微笑みと好きを拾える恋愛小説だと思える。

 

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