いつものDとちょっと違った風情のある本だった。
いつもなら旅の過程を描くものが多いんだけど、今回は旅の過程というより、ホラーのような閉ざされた空間が舞台だった。そういう意味では第一巻に似ているかもしれない。そして、今回はヴァンパイアの哀しみを描いているわけではなく、辺境の厳しさを主に描いているような気がした。
しかし、たとえ雰囲気が違っていたとしても、DはDなんだと思った。
Dはダンピールなのである。吸血鬼であり、人間であり、吸血鬼でもなく、人間でもない。
そのどちらでもあり、どちらでもないDを通じて描かれる人間も吸血鬼も同じように哀しくて、愚かだった。
ファンタジーだけれど、そのハードボイルドな世界観に惹かれる人は多い。
今回の作品もDの渋さと辺境の人間たちのカッコよさに惚れてしまう内容だった。
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