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 ◇「D-邪神砦」 菊地秀行 (朝日ソノラマ文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 貴族の“遊戯地”として恐れられている谷間に、『都』に向かう乗合の飛行車が不時着した。

 やくざ、酒場女、老夫婦、戦闘士、少年、そして謎の“サクリ”とそれを護送する護送官ら二人。

 この奇妙な取り合わせの乗客たちは、死の谷間からの脱出の成否を居合わせたDに託したいと願った。しかし、Dがこの谷間を訪れた目的は、昔、神祖の軍と戦った貴族の砦を訪れることにある。

 果たして前途に待つものは――?

+-+- 感想 -+-+

 いつものDとちょっと違った風情のある本だった。

 いつもなら旅の過程を描くものが多いんだけど、今回は旅の過程というより、ホラーのような閉ざされた空間が舞台だった。そういう意味では第一巻に似ているかもしれない。そして、今回はヴァンパイアの哀しみを描いているわけではなく、辺境の厳しさを主に描いているような気がした。

 

 しかし、たとえ雰囲気が違っていたとしても、DはDなんだと思った。

 Dはダンピールなのである。吸血鬼であり、人間であり、吸血鬼でもなく、人間でもない。

 そのどちらでもあり、どちらでもないDを通じて描かれる人間も吸血鬼も同じように哀しくて、愚かだった。

 

 ファンタジーだけれど、そのハードボイルドな世界観に惹かれる人は多い。

 今回の作品もDの渋さと辺境の人間たちのカッコよさに惚れてしまう内容だった。

 

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