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 ◇ 北村薫 「秋の花」 (創元推理文庫) ◇

+-+- あらすじ -+-+

 絵に描いたような幼馴染の真理子と利恵を過酷な運命が待ち受けていた。

 一人が召され、一人は抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。

 文化祭の準備中の事故と処理された女子高生の墜落死――親友を失った傷心の利恵を案じ、二人の先輩である<私>は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。

 考えあぐねて、円紫さんに打ち明けた日に……

+-+- 感想 -+-+

 『円紫師匠と<私>』シリーズ第三作目。

 第一作が短編、第二作目が中篇、そして第三作目は長編。

 それぞれが異なった長さで書かれている。

 つまり、長さが違うという事は、作品像がやはり若干違ってくるのだ。

 

 よくこのシリーズは加納朋子の「ななつのこ」シリーズと比較される。

 しかし、この三作目で大きな違いが現れたかもしれない。

 つまり、主人公の性質が大きく異なるのだ。

 

 加納さんの方は「女の子らしい女の子」であり、北村さんの方は「女の子らしくない女の子」なのだ。

 もちろん、北村さんの描き方が悪いのではなくて、男性の感性ではどうしてもできない反応を加納さんは素直に表現できているのに対して、北村さんの方は「男性的」なのだ。

 

 その辺は男性作家が女性の主人公を描く時の限界なのかもしれない。

 ただ、主人公の<私>が円紫師匠と行動すると、一気にこの違和感がなくなる。

 つまり、男性的な部分をすべて師匠が引き受けることにより、主人公の<私>が女性的になるのだ。

 

 さて、本編の感想はやはり最後の最後で円紫師匠に救ってもらったって感じがする。

 いつものように温かでポジティブな言葉は読者である僕を勇気付けてくれるものだった。

 この温かさこそが、このシリーズの最大の特徴であろう。

 長編だからこそ円紫師匠の言葉の一つ一つが胸に染み渡っていった。

 

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