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 ◇「錦繍」 宮本輝 (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すらできない事でした。」

 

 運命的な事件ゆえ愛し合いながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔てて再会した。そして女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生の物語。

+-+- 感想 -+-+

 長い間すれ違い、どこかすっきりとしない何かを残しながら、元夫婦はそれぞれこの十年を過ごしてきた。そのすっきりとしない何かを清算するように、二人の手紙のやりとりが始まる。壊れた思い出はこの手紙のやりとりで再構築されるのだろうか。

 

 何かが残っている為にそれぞれ過去に縛られていた二人。そして過去に囚われる事によって、今を見失い、そして「生きる」事さえ見失おうとしていた。

 生きる事とは、死ぬ事とは?

 最も大切な事は何?

 それを考えさせられる一冊。

 

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