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 ◇「屍鬼(五)」 小野不由美 (新潮文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 村人たちはそれぞれに凶器を握り締めた。

 「屍鬼」を屠る方法はわかっていた。

 鬼どもを追い立てる男たちの殺意が、村を覆っていく――。

 白々と明けた暁に切って落とされた「屍鬼狩り」は、焔に彩られていつ果てるともなく続いていった。

 高鳴る祭囃子の中、神社に積みあげられる累々たる屍。

 その前でどよめく群れは、果たして鬼か人間か……。

 血と炎に染められた、壮絶なる完結編。

+-+- 感想 -+-+

 本当に恐ろしいのは屍鬼たる彼女らなのだろうか?

 それとも、屍鬼になって現れたその人の本心なのだろうか?

 答えはわからない。しかし、屍鬼にしろ、恐怖と怒りによる暴徒にしろ、極限状態で見せる顔こそが、真実なのだろう。

 

 静信にしろ、敏夫にしろ、極限状態で彼らは心の闇とどう接したのか、それが非常に対照的なのが、彼らをわけてしまった結果なのだろうと思う。

 

 律子の姿には胸を打たれた。

 屍鬼だけど、それに負けなかった彼女の姿に頭が下がる思いだ。

 

 ホラーだけど、純文学的。これこそ、屍鬼のもっとも評価される要素の一つなのだろう。静信の心の闇と屍鬼の闇が混ざり合った時、この混乱の中で、絶望よりも深い虚無が広がっていた。

 

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