本当に恐ろしいのは屍鬼たる彼女らなのだろうか?
それとも、屍鬼になって現れたその人の本心なのだろうか?
答えはわからない。しかし、屍鬼にしろ、恐怖と怒りによる暴徒にしろ、極限状態で見せる顔こそが、真実なのだろう。
静信にしろ、敏夫にしろ、極限状態で彼らは心の闇とどう接したのか、それが非常に対照的なのが、彼らをわけてしまった結果なのだろうと思う。
律子の姿には胸を打たれた。
屍鬼だけど、それに負けなかった彼女の姿に頭が下がる思いだ。
ホラーだけど、純文学的。これこそ、屍鬼のもっとも評価される要素の一つなのだろう。静信の心の闇と屍鬼の闇が混ざり合った時、この混乱の中で、絶望よりも深い虚無が広がっていた。
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