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 ◇「幻想封歌」 冴木忍 (富士見ファンタジア文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 おれの名はカシム。魔法使いの弟子だ。

 ――というのは名ばかりで、魔法なんか教えてもらったことがない。

 ていのいい家政婦がわりだ。

 おれの師匠のメルヴィは、顔は良いけど、性格に問題のある人で、見栄っ張りの意地っ張り、怠け者の浪費家、口は悪いが手も早い。

 しかもたまにしかこない仕事の依頼を、その巨大な魔法の破壊力でことごとく失敗させてしまうという、悪名高い魔法使いだ。

 おれの苦労と貧乏の種は尽きない――。

 そんなおれたち師弟が、大いなる力を秘めた<古代王国の宝>をめぐる、とんでもない事件に巻き込まれた……。

+-+- 感想 -+-+

 今では売れっ子作家と言っても過言ではない冴木忍のデビュー作である。

 確かに今に比べれば、多少の構成の未熟さなどはあるけれど、それとは同時に冴木忍という作家の個性が色濃く反映させられた作品でもあると言えよう。特に主人公の設定は冴木忍の色を強く反映させていると思う。

 

 魔法や剣の描写が緻密になるにつれて、心理描写などがおろそかになりがちだけど、この作品は違う。魔法や剣の描写は軽く触れる程度で、登場人物たちの心の動きをヴィヴィッドに描いていると思う。

 

 心理的な部分の構成などは繊細で緻密なのは、やはり女性ならではなのだろうか。

 喜怒哀楽を巧妙に描いている様は、他の作家のファンタジー小説とは一味違う彼女の色だと僕は思った。

 

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