今では売れっ子作家と言っても過言ではない冴木忍のデビュー作である。
確かに今に比べれば、多少の構成の未熟さなどはあるけれど、それとは同時に冴木忍という作家の個性が色濃く反映させられた作品でもあると言えよう。特に主人公の設定は冴木忍の色を強く反映させていると思う。
魔法や剣の描写が緻密になるにつれて、心理描写などがおろそかになりがちだけど、この作品は違う。魔法や剣の描写は軽く触れる程度で、登場人物たちの心の動きをヴィヴィッドに描いていると思う。
心理的な部分の構成などは繊細で緻密なのは、やはり女性ならではなのだろうか。
喜怒哀楽を巧妙に描いている様は、他の作家のファンタジー小説とは一味違う彼女の色だと僕は思った。
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