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 ◇「刻の静寂」 冴木忍 (富士見ファンタジア文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 季節はもう冬を告げているというのに、この日は暖かな好天だった。あまりの気持ちよさに、のんびりベッドでごろごろ過ごすことに決めたのだった。

 ささやかな、ほんのひととき。

 リジィオは幸せを満喫していた。

 つかず離れず、リジィオと旅を共にするシザリオンとスティンが、行方不明になったという知らせが届くまでの――わずかな至福。ああっ、何故に?

 弟子を自称するシザリオンが、リジィオに黙って受けてしまった依頼。すぐに終わる見込みがはずれ、スティン共々脱出不可能の迷路に彷徨う。

 表題作『刻の静寂』の他、リジィオの髪の秘密に迫る『虹色の封印』などを収録。

+-+- 感想 -+-+

 相変わらずのリジィオの不幸大爆発である…でも、同時に今回の巻では、リジィオの髪の秘密やら、シザリオン、スティンの語られていなかった過去が垣間見れてなかなか興味深かった。

 

 その中でもやはりリジィオの髪の秘密が描かれている『虹色の封印』は非常に興味深かった。ストーリー的にも非常にまとまっており、最後の最後で謎が核心部分で覆われたままだった。そして、それがリジィオの封印にどう関係してくるのかがなかなか泣けるものだった。リジィオ以外の神人も出てくるし。

 

 シザリオン、スティンの生い立ちもなかなか泣けるし、面白かった。特にシザリオンとリジィオと出逢った時の気持ち、そして男だとわかった時の絶望の時の話は笑えたし、泣けた。あと、シザリオンの道士になるきっかけの話もなかなか切ないものだった。意外な一面を『刻の静寂』では見れる。

 

 他にも「月の痕」のショートショートもテンポよく読めた。冴木忍がショートショートも非常にうまい。人間の業をうまく描き、リジィオのやるせない気持ちも汲み取れる仕上がりになっていると思う。

 

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