宮本輝の代表短編作二作読んだ。
はっきり言うけど、すごく怖い。底知れない日常の狭間に残る恐怖が行間に漂っていた。どちらの短編にもそれは言える。
「泥の河」では戦後の回復する過程の闇をすごくヴィヴィッドに描いている。純真無垢に育ってきた主人公と、辛い境遇ながら助け合って生きている姉弟。その三人の友情と、生き方によるすれ違いはかなり切なく、同時に言いようのない恐怖があった。
「蛍川」では、少年少女たちの純真な想いと、理不尽な人生がかなり深く交わっている。理不尽さと夢見ている少年少女たちの邂逅は、あまりにも劇的で、そしてあまりにも儚いものだった。そうやって、大人になっていくのかもしれないけれど、蛍と闇、そして人との絡みはどうしても底知れない恐怖を喚起させた。
短編としての切れ味は抜群の二作品だと思う。
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