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 ◇「この闇と光」 服部まゆみ (角川文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 失脚した父王とともに、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君・レイア。優しい父と侍女のダフネ、そして父が語り聞かせてくれる美しい物語だけが、レイアの世界の全てだった。シルクのドレスや季節ごとの花々に囲まれた、満ち足りた毎日。しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界が少しずつ歪んでゆく――。

+-+- 感想 -+-+

 まず、文章を読んで、僕が感じたのは拭い難い違和感だった。

 なぜ、ファンタジーなのにあまりにもリアルなものがあるのだろう?という違和感。

 「カセット」とか「小公子」「車」などが出るたびに僕は混乱させられたと言ってもいい。

 

 そして、後半部分でその違和感の正体が明かされる。

 すんなりと僕は納得したのだけど、同時に今度はなぜ?という謎が生まれてくる。

 それが最後までこの作品を読ませる魅力になっているのだろう。

 

 幻想的で優美な文章がぐいぐいと読者を引っ張り、盲目であるために一層謎に満ちた登場人物たちが読者を翻弄する。そして最後には人間の深淵にまで連れ込んでしまう。その手法は見事というしかない。純文学と言ってもいいし、ファンタジーと言ってもいい、独特な世界観を持った作品だった。

 

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