まず、文章を読んで、僕が感じたのは拭い難い違和感だった。
なぜ、ファンタジーなのにあまりにもリアルなものがあるのだろう?という違和感。
「カセット」とか「小公子」「車」などが出るたびに僕は混乱させられたと言ってもいい。
そして、後半部分でその違和感の正体が明かされる。
すんなりと僕は納得したのだけど、同時に今度はなぜ?という謎が生まれてくる。
それが最後までこの作品を読ませる魅力になっているのだろう。
幻想的で優美な文章がぐいぐいと読者を引っ張り、盲目であるために一層謎に満ちた登場人物たちが読者を翻弄する。そして最後には人間の深淵にまで連れ込んでしまう。その手法は見事というしかない。純文学と言ってもいいし、ファンタジーと言ってもいい、独特な世界観を持った作品だった。
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