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 ◇「紅塵」 田中芳樹 (祥伝社NONNOVEL)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 十二世紀半ばの中国。

 宋は大陸北方に女真族が興した金に敗れ、広大な領土を失い屈辱的な平和条約を強いられた。だが、政変によって金の国王となった完顔亮に、不穏な動きがあることが判明。宋皇帝高宗は、勇武知略の若き文官子温に、金に再侵略の意図があるか探れ、との命を下した。子温は女将軍と異名をとる母梁紅玉と共に金に潜入した……。

 六十万の金軍を迎え撃つ子温と宋の忠臣英傑たち。長江を舞台に繰り広げられる宿命の戦いを、雄壮華麗に描く歴史スペクタクルの傑作!

+-+- 感想 -+-+

 岳飛という中国随一の英傑は日本ではほとんど無名に近い。

 しかし、彼のそのタレント性は中国史上でも三本の指に入る。

 今回は、彼の物語ではなく、彼の生きた影響がまだ色濃く残る時代の話だ。

 

 英傑を必要とする時代から誠実な秀才たちが必要となる時代への移行期間を非常にうまく描いている。英傑たちを回想という形で描き、うまく時代背景を説明している。田中芳樹らしい複雑な情景をうまく描き、戦闘時の描写は脳裏に各軍の動きが浮かび上がるようにわかりやすかった。

 

 宋という日本ではまったく知られない時代。

 それでも魅力的な武将たちが魅力的に活躍するのは、モチーフがいいのだろうか、それとも田中芳樹の手腕によるところが大きいのだろうか…。

 さして英傑が登場しないにもかかわらず、魅力的なキャラクターに仕上げる田中芳樹の筆力はさすがだなと思う。

 

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