岳飛という中国随一の英傑は日本ではほとんど無名に近い。
しかし、彼のそのタレント性は中国史上でも三本の指に入る。
今回は、彼の物語ではなく、彼の生きた影響がまだ色濃く残る時代の話だ。
英傑を必要とする時代から誠実な秀才たちが必要となる時代への移行期間を非常にうまく描いている。英傑たちを回想という形で描き、うまく時代背景を説明している。田中芳樹らしい複雑な情景をうまく描き、戦闘時の描写は脳裏に各軍の動きが浮かび上がるようにわかりやすかった。
宋という日本ではまったく知られない時代。
それでも魅力的な武将たちが魅力的に活躍するのは、モチーフがいいのだろうか、それとも田中芳樹の手腕によるところが大きいのだろうか…。
さして英傑が登場しないにもかかわらず、魅力的なキャラクターに仕上げる田中芳樹の筆力はさすがだなと思う。
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