芥川龍之介の生き様やその時代背景、文壇など彼を中心に一つの物語の謎が解かれていく。後半部分のその推理にはなかなかの説得力があり、同時に<私>の心と、彼らの生き様などが重なり合い、<私>を強く揺さぶる。
今までのシリーズが推理に重点を置かれているとしたら、今回の作品は<私>の内面にかなりのウェイトを置いているような気がする。純文学と接しているからだろうか、<私>は強く左右にぶれている。
前半部分はかなり辛かった。
というのも、僕に芥川龍之介や菊池寛などの知識が不足していたのも原因があると思う。時代背景、文壇の情勢など右も左もわからない僕はただ<私>の得意げな説明を読むだけだった。
ただ後半はにわかとはいえ、その知識が蓄積される事で<私>の説明についていけるようになり、すいすいと『姫君』の謎解きの部分は読めた。この辺はさすがだと思う。
北村薫も書くようにこの女の子は『特別』である。
普通の女の子と思っちゃいけない。
この女の子に馴染めなければ、このシリーズはダメだろうな。
ついそんなことを強く認識させられた巻だった。
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