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 ◇「不夜城」 馳星周 (角川文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 アジア屈指の大歓楽街――新宿歌舞伎町。

 様々な民族が巣食うこの街で、日台混血の故買屋・劉健一は中国人黒社会の中で器用に生き抜いていた。だが、かつての相棒・呉富春が歌舞伎町に戻ってきた事から事態は一変した。富春は一年前、上海マフィアのボス、元成貴の片腕を殺し逃亡を続けていたのだ。健一は元に呼び出され、三日以内に富春を連れてこいと脅される。

 同じ頃、夏美と名乗る謎の女が健一に仕事を依頼してきた。彼女が売りたいと口にした意外なものとは――。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちを、濃密な筆致で綴った危険な物語。

+-+- 感想 -+-+

 馳星周の作品を初めて読んだのだけど、予想以上に面白かった。

 もちろん、これが出版された当時、非常に話題になった本なので、それなりに面白いんだろうなと思っていたのだけど、その期待以上のものだった。

 500ページ以上の長編サスペンスだけど、登場人物たちの生き残ろうとする姿を馳星周が絶妙な筆致で描いて、一気に読ませてくれた。ページを閉じて、中断するのが惜しいと思わせる作品だったと思う。

 

 この作品の一番の見所はやはり新宿の喧騒と混乱の中で何とかして生き残ろうとする人間たちの姿と、半々と呼ばれるハーフの人間たちの環境とその生き様だろう。健一の過去、そして現実が交互に描かれる事により、彼の変化が如実に感じられる。

 

 夏美というミステリアスな存在も徐々に物語が進むにつれて、存在感を増していく。

 健一の行き着く先は死か生か…。

 なんとか『生』を掴み取ろうとしながら、自分たちの居場所を探す健一の姿が印象に残った。

 

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