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 ◇「MISSING」 本多孝好 (双葉文庫)  ◇

+-+- あらすじ -+-+

 瞼を開けると、背後には飛び降りたはずの崖がそびえ立っていた。少年に助けられた私は、自分の過去を語り始める。「わたしは人を死なせました」。なぜか見ず知らずの少年に語っている自分。背負いきれなくなった過去を私は語りだす。

 第16回小説推理新人賞受賞作「眠りの海」を含む処女短編集。

 「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!

+-+- 感想 -+-+

 本多孝好?

 名も知らない作家に正直、僕はあまり期待していなかった。

 そしてそれはいい意味で僕を裏切ってくれた。

 村上春樹的文体。

 静謐と透明感が入り混じった世界観にすっかり僕は魅了された。

 

 気に入ったのは「眠りの海」と「祈灯」、「蝉の証」「瑠璃」だ。

 特に「眠りの海」と「祈灯」は最近読んだ短編集の中でもかなりお気に入りのランクに入ると思う。

 「眠りの海」では不器用でどこまでも誠実なカップルたちの姿にどうしようもなく切なくなったし、「祈灯」は妹や幽霊ちゃんの背後にある漆黒の闇に慄然とし、そしてそれに耐える強さに感動した。

 

 この人の描く小説にはどれも心の深淵が背後に潜み、そしてそれに負けない小さな灯火がある。真っ暗でありながら、力強く勇気をもらえる作品だと思う。

 

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