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 ◇「新宿鮫」 大沢在昌 (光文社文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 ただ独りで音もなく犯罪者に食らいつく――。「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。待ち受ける巧妙な罠!

 

 絶体絶命の鮫島……。登場人物の圧倒的な個性と最後まで域を着かせぬ緊迫感!超人気シリーズの輝ける第一作。

+-+- 感想 -+-+

 『不夜城』に続き、ハードボイルド系を読む。どちらも奇しくも新宿を舞台にしているのはやはり興味深い。 硬派な主人公と美女。ハードボイルドの定番だけど、それが強く読者を引き付けるのだから、不思議だ。 男らしさというものが減退している現在、もしかすると、男性も女性もある種の男らしさをこうした物語で求めているのかもしれない。

 

 しかし、いくらハードボイルドとは言え、『新宿鮫』の主人公である鮫島は、北方謙三が書くような強さと確信に溢れたキャラクターではなく、恐怖もすれば、悲鳴もあげる主人公だ。でも、彼がハードボイルドである理由は、その彼の生き方が魅力的だからだろう。警察官という職業に誇りを持ち、信念を曲げず、ぶつかっていく。そんな姿がハードボイルドと呼ばれる所以なのかもしれない。

 

 繰り返される犯行が緊迫感を生み、鮫島自身の持つ危うさと混ざり合い、物語は綱渡りの連続で、息をつく暇さえ与えてくれなかったようなイメージがある。最後の最後ですべてが集約されるさまは見事の一言に尽きた。

 

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