僕はホラーが苦手である。
読んでいるだけで、その怖いシーンが脳裏に鮮明に焼き付けられ、ビビってしまう。
現実なんかよりも空想のほうが一層残忍に想像できるためなのかもしれない。
そんなわけで、ホラーは苦手だ。
でも、この作品にはなぜか惹かれた。
このわけのわからない「ぼっけえ、きょうてえ」という言葉に魅入られたからかもしれない。
四篇の短編で構成される本作品はすべて岡山が舞台である。作者の故郷という事もあり、自然などの風景描写はリアリティがあるし、方言やその土地の人柄などにもリアリティを感じる。そして、その土地にある習慣や儀式などを取り込んで、彼女の描く岡山は非常に恐ろしい世界へと変貌するのである。
そう、何の変哲の無い漁村までも。
日本的ホラーが至るところに散りばめられ、映画などのホラーとはまったく異質の恐怖を実感できる。
人の底にある悪意、そして見えぬ者たちの怨念、悔恨、嘆き…。
そのすべてを詰め込まれた各作品を読み終わったとき、僕は「ぼっけえ、きょうてえ(すごく怖いという意味)」という言葉を呟いてしまった。
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