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 ◇「心とろかすような」 宮部みゆき (創元推理文庫)

+-+- あらすじ -+-+

 あの諸岡進也が、こともあろうに俺の糸ちゃんと朝帰りをやらかしたのだ!

 いつまでたっても帰らない二人が、あろうことかげっそりとした表情で、怪しげなホテルから出てきたのである!!

 ――御馴染み用心犬マサの目を通して描く五つの事件。

 さりげなくも心温まるやりとりの中に人生のほろ苦さを滲ませ、読む者をたちどころに宮部ワールドへと誘っていく名人芸を、とくとご堪能あれ。

+-+- 感想 -+-+

 マサとそのパートナーの加代ちゃんが活躍する短編集である。

 日常のなんでもない事件から、殺人事件まで蓮見探偵事務所には様々な事件が舞い込んでくる。それをマサ独特の語り口で、描かれるのが何ともいい味を出している。これは『長い長い殺人』の財布たちにも同じ事が言えるだろう。本当に宮部さんはこうした『人の言葉を言えぬモノ』たちの言葉を紡ぐのがうまいと思う。

 

 その中で僕が印象的だったのは、「白い騎士は歌う」「マサ、留守番する」「マサの弁明」の三作品。

 「白い騎士は歌う」では宮部さんらしいハートフルな作品に仕上がっている。詳しいことはネタバレで書けないけど、切なくても温かい気持ちになれる作品で、とても好きな短編だ。

 「マサ、留守番をする」ではタイトル通り、マサが留守番をして、その間に起こる事件をマサの視点で分析していくというものだが、マサが日頃どのようにして調査し、行動しているのかわかる作品だ。だから、マサの個性がとてもよく出ている。

 「マサの弁明」は結構、笑えた。なんと登場人物に『宮部○ゆき』さんが出てくるのだ。その彼女が蓮見探偵事務所に依頼をしてきて…予想外の新事実に突き当たる。そして、その事で、あとがきでの宮部さんの弁明というか、注釈も笑えた。

 

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